メモルメタモル | ナノ
87 星に焦がれた末路
「ほら、レバーを押してごらん」
 肩に乗る鳥が囁く。悪魔のような甘言に絡め取られて体が言うことを聞いてしまう。
「押せば、どうなるの?」
「わかりきったことだろう? 星が降るんだよ」
 星のない夜空に星を返すために僕はここまで来た。けれど、レバーは黄色と黒の危険を表す色をしている。
「本当に降るの?」
「降るさ。ずっと奴らはここで星を独り占めにしていたんだから」
 月に星は閉じ込められた、と鳥は言った。暗い夜空が怖くて、星を逃がすために旅をしたのに。今さら何が怖くて戸惑っているんだろう。
「どうして星を閉じ込めたのさ」
「綺麗だからさ。自分以外に見せないようにボクらから奪ったんだよ」
「今さら?」
「今更もなにも、ずっとそう思っていたんじゃないか? ボクに月の意思はわからないよ」
 鳥の口ぶりは何かを知っていそうだ。けれど、教えてくれる気は無いんだろう。
「ほら、押してごらんよ」
レバーの上に手を乗せると、そこに止まって体重をかけられる。押せよ、とじわりじわりレバーが沈んでいく。
「星を見たいんだろう?」
「うん」
 僕は星が見たくてここまで来たんだ。今さら何も怖くはない。例え、このレバー一つで地球が砕けてしまったとしても。
#ノベルちゃん三題
「星、小鳥、レバー」
2016.02.20



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