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真っ白な病室。ベッドに横たわる少女は一人淋しく窓の外を眺めていた。
ここに入れられてからどれだけの時間が経ったのだろう。淡い色の花をつけていた木々は若葉を茂らせ、紅葉し、そしてまた花を咲かせていた。
その少女の傍らに佇む黒色の死神。
身の丈の二倍ほどもある大鎌を携え、壁に背を預けて、静かに目を閉じて、動かない。
「死神さんは、わたしをどうするの?」
震える声が言葉を紡ぐ。その頬を滑り落ちる透明のそれの名を、彼は知らない。
「………それを俺が答えたところで、未練は消えるのか?」
「…………」
「………あと五分。それがお前に残された時間。お前に振り分けられた寿命の期限」
静かに鎌を構える死神。動きに合わせて鎖がじゃらじゃらと鈍い金属音を上げる。その目に見えるのは肉体と魂を繋ぐ、ボロボロの鎖。ただ、それだけ。
「何か言い残したいことがあるのなら聞いてくれてやる」
切っ先はただ一点のみを見据えて動かない。
「もし、生まれ変われるのならーーー………
少女が静かに笑みを堪えた時、鎌は静かに振り降ろされた。
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