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怒号が飛び、ゆっくりと瞼をあげる。目の前には小太りの中年男性。
誰だったかと思い出そうとして頭に鈍痛が走り、顔を歪ませる。
曰く、自分には莫大な借金がある。
故に、奴隷闘剣士。
記憶がさっぱり抜け落ちている。頭を抱えたくなったが、それすら許されないまま闘技場へと連れ込まれていった。
あれから一週間、およそ人の所業とは思えぬ事ばかりやらされてきた。闘う相手は殺す気で襲いかかってくる。やらなきゃやられる。
連戦を重ねていくたび血なまぐさい戦いに身を投じている自分が嫌になり、しかし記憶が無い今、状況を打開しようがない。逃げ場もない。
ただただ指示に従い血を血で洗う。
目標額まで稼いだらここから出してやる。そう伝えられもう何日たっただろう。目標まであと一戦、次勝てば自由だ。
安堵から冷たいベッドに身を投げ、休む。あぁ、そういえばここ数日酷く頭が痛む…。考えれば考えるほど頭痛は厳しさを増していく。
今は明日のことだけを考えよう、静かに瞼を落とした。
怒号が飛び、ゆっくりと瞼をあげる。
目の前には小太りの中年男性。
誰だったかと思い出そうとして頭に鈍痛が走り、顔を歪ませる。
悪夢はまだ、醒めない。
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