05
失敗した、と、心の中で静かに悪態をつく。
確かに腕を弾き飛ばしたつもりだったのに。
手痛い反撃は肩を大きくなぞり、肉を抉り腱を切った。
力の抜けた右腕がだらりとだらしなくぶら下がり、利き腕を失くした戦士は肩で呼吸をしながら静かに地に横たわっている。
長い前髪の間から覗く目に諦めはない
ーーーはずだった。
目の前がどす黒く澱み始める。鮮やかな青だったストールは血をたくさん吸い込んで既に真っ赤に染まっていた。
片腕はまだ使える。まだ、やれる。
相手は油断しきっている。今ならばまだ。
そう思い全力で仕掛けた不意打ちは空を掴んだ。
判断が一瞬遅れる。
鋭い切っ先が一閃、赤を撒き散らしながら落ちた左腕が宙を舞う。
「小賢しい」
両腕を失った戦士は絶望に塗れながら地に倒れ伏す。
その目に光は無い。
「ようやく捕まえたよ。門番さん」
愉快、愉快。ケラケラと不気味な笑い声だけがこだました。
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