コンコン
夜遅くに巻島の部屋の扉がノックされた。
扉をあけるとそこにいたのは、東堂だった。

「こんな夜にどうした・・・ショ?」
「巻ちゃんに会いたくて、寮を抜けてきた!」
「クハっ、この間の日曜に会ったばっかりショ」
「巻ちゃんの声が聞きたくて、しょうがなかったのだ」
「・・・(あー、もうかわいい)・・・ショ」
「なんだ?巻ちゃん」
「部屋入るショ」

部屋に通すと、「巻ちゃんのベッドなのだよ!」と言いながら巻島のベッドにダイブした東堂を横目に、巻島も隣に寝る。
巻島は東堂のカチューシャを外す。

「巻ちゃん、」
「なんショ?」
「その、あのだな、」
「夜這いにきたんショ?」
「ち、違う!」
「ここはそう言ってないショ・・・」

巻島の長くて角ばった指が、東堂のシャツのボタンを一つずつ外していく。

「う、ぁ、ひゃぁ!」

いきなり首筋を舐め上げられて、東堂は身体を反らす。
そこは弱い。
初めてするのにもかかわらず、巻島は東堂の弱点を知っていて、逃げようと身体を捩じらせても、巻島はどうやっているのか器用に東堂をベッドに押し付けていて逃げられなかった。
結局、弱い首筋を何度も舐められて、東堂はびくびくとただ震えるだけになった。

「や、やだ!もう、そこだめ」
「ここがいいんショ?」
「いいけど、や、そこばっかだめぇ、やぁああっ」

きゅ、と胸でつんと存在を主張していた淡い色の飾りを摘まれて、東堂は目の前の巻島にぎゅっと抱きついた。
巻島は東堂かわいいっショと囁いて。
そんな低くかすれた声に東堂は身体を震わせる。
胸を意地悪に弄られたまま深く唇を塞がれば、感じやすい身体だと自分でも分かっている東堂になすすべもなく、巻島の愛撫になされるがままになった。
片腕で力強く抱きしめられ、ずっと引く引くと刺激を待ちわびている、東堂の秘所に巻島の長い指が触れて、東堂の快楽が滲む青い瞳と巻島の欲情した黒色の瞳が交わったとき、一度に二本突き入れられた。

「ああ、ぅ、ひゃあああっ!」
「・・・指だけなのに、すっげーきつい、ショ」
「ぁん、やぁ、あああっ」
「これでどうっショ?」
「ひゃっ、つめたっ!」
「ローションっショ・・・これでだいぶほぐれてきたショ。それで、どうしてほしいっショ」

低く甘く東堂の耳元で囁かれ、唇に弧を描きながら黒い瞳を細められた。
それと同時にぐちゅぐちゅといやらしい水音をさせながらバラバラに中の指を動かされて、視界も聴覚も全部支配された東堂はいってしまいそうなほどに感じて、まきちゃん、と彼の名前を呼ぶ。
意地悪な指は止まってくれない。
けれど柔らかく巻島に微笑まれて、東堂はぎゅうっと目の前の巻島に抱きついた。

「巻ちゃん、待ってくれ!まだ、心の準備ができてないのだ」
「・・・ここまで煽っておいて、今更ショ」
「3分でいい。いや、1分でいいから待ってくれ」
「わかったショ・・・俺も嫌がる東堂としたくないショ」

据え膳で待たされること10分。

「・・・もういいショ」
「いやいやいや、巻ちゃん」
「お前、もしかして童貞ショ?」
「そうなのだよ。童貞だのだよ・・・」
「女子にあんなにモテるのに、不思議ショ」
「し、しょうがないだろ、だって初めては巻ちゃんとって決めていたのだからな」
「じゃあ、今日がその初めてショ・・・?」
「そうだ!そのために会いに来たのだ!」
「じゃあ、するから痛かったら、肩でも噛むショ」

もう一度、掌にローションを伸ばした。

「ま、巻ちゃん、」



「ま、きちゃ、まきちゃん・・・っひゃぁあ・・・っ」
「あぁもう、かわいいショ、東堂」
「ぅん、ひゃあ、ああっ、まきちゃ」

快楽の涙を滲ませている瞼に軽いキスを落とした巻島は、東堂の中で好き勝手に動いていた指を抜き取った。
さっきまで弄られていた内部はきゅっぅと勝手にうごめき締め付けて、東堂は小さく喘いでしまった。ひくひくとひくついている東堂の秘所に自分の怒張したものを押し当てながら、巻島は東堂の唇を塞いだ。
そのまま先端の太くて大きな部分だけをゆっくり飲み込まされて、東堂は甘い悲鳴を上げた。

「ぁぁあああああっ・・・!」
「っ・・・東堂ん中、凄い絡み付いてくるショ」
「やぁああっ、ああっ、ああん」

そのまま深く口付けられる。甘く気持ちのいいキスに東堂が安心しきって身体を巻島に委ねていると、突然先端だけ含まされていた秘所にゆっくりと巻島のおおきくながいものが入り込んできた。

「っ、ん゛んん―――・・・っっ!」

巻島のかたくて大きいものが与えられて、刺激に待ち焦がれていた東堂の媚肉は、最高の感度をもって応え、東堂は何度も身体を振るわせた。深く口付けをされているため声はすべて巻島の口の中に飲み込まれたが、そうでもなければとんでもなく濡れた声をあげていただろう。ゆっくりと、けれども確かに犯される。

「……まきちゃ、ん、」
「尽八、かわいいショ」
「巻ちゃん……だいすき、」

添えられた巻島の大きな手のひらにすり、と頬を寄せる。
とろとろにとかされてしまった思考は、まともにものも考えられない。ただ、奥深くまで繋がっている場所から熱いほどの熱が伝わってきて、巻島と繋がっているのだとそう思うだけで嬉しかった。

「…愛してるショ、尽八」
「ふぁぁ…」
「ほんと、かわいいショ」
「ん……、すき、だいすき」

ねえ、キスして。
東堂に言われた巻島は、頬に唇を寄せた。
そして、触れるだけのキスを落とせば、東堂はとろけるように甘い微笑を浮かべた。

「壊すほど愛してもいいか?」
「…っ、い、い」

まきちゃんの、好きにして。
東堂が身体を震わせながらそう告げた瞬間、巻島は東堂を強引にベッドに押し付けて。そうして、勢い欲腰を引き、快楽の悲鳴を上げる東堂の秘所にそれをもう一度突き刺した。

「ああああああっ!!」

一際大きな甘い嬌声を上げた東堂は、びくびくと白濁を迸らせる。それで中を強く締め付けたらしく、巻島も小さく呻きながら東堂の中にたっぷりと濃くねばついた液を吐き出す。

「すごくかわいいショ、尽八」
「・・・・ばかぁ」

棘なんてどこにも含まれていない悪態。
それを聞いた巻島がくすりと笑う。
優しく唇を塞がれ抱きしめられて、いっそのことこのまま本当に溶けてしまえればいいのにと、東堂は思った。
初めての夜は真っ暗闇に融けて消えた。

初めての夜
(もう、すきすきだいすき)



20140717/巻東初めての夜。ものすごく押してくる東堂が実はものすごいウブだったらかわいいなぁって話。


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