巻島は魔法の薬を手に入れた。これは一見普通の制汗剤に見えるが、これを浴びると女になってしまうのだ。
何のために使うのかというと、それはちょっと言えないが。イケナイことをしようと思って、手に入れたのだ。

「東堂、おま、このスプレー浴びたのか?」
「ああ、いい香りの制汗剤だぞ」
「んで、体はどうもないショ?」
「ん?」

魔法の薬が徐々に効き始めた。東堂の顔が徐々に赤らんでいく。

「まきちゃん、体が火照って、熱いのだ」

眉間に皺を寄せながらの催促に頷いた巻島が、東堂をゆっくりとベッドに押し倒した。見ないようにと避け続けていた胸元に視線を移すと、一瞬のためらいの後、巻島はそっとそれに触れてみる。

「っ、ん……。」

途端に、東堂の唇から微かな声が漏れた。熱を帯びた吐息に、巻島は鼓動が高まって行くのを自覚する。初めて本格的に触れる柔かさに一種の感動を抱きながらまさぐると、東堂はそれだけで気持ちよさそうに息を乱していった。思わず、巻島の身体も火照っていく。だが、優しい愛撫を続けていく巻島に対し、東堂は不服そうな眼をして彼を睨みつけた。

「っ、まきちゃん……わざとやっているのか……!」
「な、なんか可笑しいことしたか?俺」
「そんなんじゃ全然足りないのだよ……!」

これでもかと言わんばかりに女性への配慮が感じられる巻島の触り方は、しかし魔法の薬の効果で敏感になっている状態の東堂には酷くじれったいものだったらしい。ならば、と巻島が手に少し力を込めて刺激すると、途端に東堂は形の良い眉を歪ませる。

「あっ、は……やれば、できるじゃないのかっ、……ぁん!」

憎まれ口の合間に艶やかな喘ぎが上がり、巻島は喉を鳴らして唾を飲み込んだ。普段よりも女性らしさが感じられるとはいえ、その顔は東堂のもの。けれど徐々に快楽に酔い痴れていく異性の姿に興奮は増していくばかりで、巻島は気の向くまま胸の頂きを指先で摘み上げてみた。するとまた、東堂が鳴き声を漏らしながら背中を仰け反らせる。

「やあっ!あっ、それ、そこ、やば……っぁあああ!」

両胸を揉みしだきながら執拗に先端を刺激していると、ひときわ大きな嬌声と共に東堂の身体がびくりと強張った。その一瞬の後にかくりと力を失って息を乱す様に、巻島は悟る。今、自分のこの手で女を絶頂させたのだと。
途端にただでさえきつい股間の熱がさらに膨張したのを自覚しながらも、しかし巻島はさらに先に進もうとはしなかった。一度達したら、それで東堂は満足するかもしれない。希望とも絶望ともとれる複雑な心境を抱きながら、彼は事態が終息したかどうかを見極めようとする。
やがて大きく深呼吸しながら目を開けた東堂の瞳には、けれど依然として情欲の熱が宿っていた。まだ、終わらない。知らず続きを期待してしまった自分自身を巻島は内心叱咤した。

「足り、ない……」

ぽつりと独り言のように呟いたかと思うと、東堂が動きを見せた。自らのベルトに手を掛け、熱の籠った下半身を露わにする。理性が一枚、また一枚と剥がれていくのを実感しながら、東堂は女性にとって最も秘匿すべき部位を巻島の前に晒した。思わず、と言った様子で巻島がまた喉を鳴らす。目の前の男の意識すべてがそこに注がれていることに一種の被虐心を抱きながら、東堂は巻島の大きく無骨な手を取り、自らの股間へと押し当てた。

「なっ、東堂!?」

突然の事態に巻島が慌てた声を出す。だが、東堂の取った行動はそれだけではなかった。巻島の手の平を前後に動かし、自らを再び頂点へと追い込み始める。節くれ立った男の指が何度も行き来するたびに全身を駆け巡る快感に、東堂は恍惚の笑みを浮かべながら無我夢中で腰を揺らした。

「あっ、あんっ、んああっ!いい……!これ、気持ちいい……っああ!」

とんだ痴態を見せつけられ、堪らなかったのは巻島の方だった。押し当てられた秘部は信じられないほど柔らかく熱く、巻島の指を誘うように愛液を滴らせながら何度も蠢いている。それは、あまりにも刺激が強すぎるものだった。今や彼の股間は限界近くまで膨れ上がり、ズボンの中で解放の時をいまかいまかと待っている。ともすれば切れそうになる理性の糸を必死に繋ぎとめながらも、巻島は眼下で乱れる東堂から視線を外すことはできなかった。かわいすぎる。これは天使だ。えろくてかわいいとか最強じゃないかと頭のどこかで思う。

「あんっ、あぁっ、は、また、またイく、イ……っぁああああん!」

やがてがくがくと痙攣しながら、再び東堂がひとりで快楽を極める。半ば自慰行為のようなものではあったが、自分の指がまたも女を頂点に導いたという事実に巻島は欲情を強めた。だが、この状況に陥ってもまだ彼は続きを行うかどうかを迷う。もしも今ここで東堂が満足したなら、それまで。巻島に『我を押し通して無理矢理抱く』という選択肢はなく、彼は押し寄せてくる本能への暴走を耐え忍びながら東堂の動向を見守っていた。しかし、どうやら魔法の薬を全身に浴びた影響はこれしきのことでは衰えなかったらしい。

「……もっ、と……」

ほどなく東堂は熱っぽい囁きと共に自らの指で濡れそぼった秘所を暴き、そこを巻島に見せつけた。女性の神秘の泉が、二度の絶頂でたっぷりと水を湛えて光を反射している。視線が釘付けになった巻島の理性が大きくぐらついた。切なそうに眉を歪ませ、さらなる快楽を求める東堂が半ば意識を飛ばしながら懇願してくる。

「もっと……まだ、まだ足りない……。早く、続き……して……」

刹那、巻島の心に今すぐ分身を突き挿したいという激情が湧いたが、なんとか寸でのところで抑え込む。既に東堂の愛液によってべたついている指を銀糸の先に滑り込ませ、彼は割れ目を優しくなぞった。慎重に探り当てた孔に指先をゆっくりと埋めていくと、東堂は首を横に振り、切なげに腰を揺らし始める。頭の動きに合わせて髪が枕の上を舞った。

「ぁ、ぁぁあん……!いい……もっと、強く、速くっ……ひゃぁあっ!」

いつものプライドの高さは何処へやら、理性をかなぐり捨てて喘ぐ東堂に、巻島もまた自制心の削れていく幻聴を聞きながら指を動かし続けた。初めて触れる女性の内部は想像以上に複雑で凹凸があり、しかし期待以上に熱く湿り気を帯びていた。もしもこれで東堂が満足しなかったら、その時は。巻島はやってくるかもしれない事態に瞬間心躍ってしまった己を恥じながらも、挿し入れる指の本数をひとつ、またひとつと増やして東堂を限界へと追い詰めて行った。

「あああっ!あんっ、また、またクる、来ちゃ……ぁああああ!」
「……東堂。もう、満足したショ……?」

やがて三度目の絶頂を迎えた東堂の中から指を引き抜きながら、巻島が訊ねる。果たして、東堂の答えはどちらか。理性と欲望の天秤が揺れ動く中、固唾を飲んで返事を待っていると、紅潮した顔のまま東堂はゆるりと首を横に振った。未だ冷めることのない快楽の熱に促され、東堂は自ら大きく脚を開き飢えた瞳で巻島を見上げる。

「……入れて、くれ……巻ちゃん。もっと、俺のここをぐちゃぐちゃに……犯して……」

純粋に男を求める女の姿に、巻島はついに覚悟を決めた。ズボンと下着を脱ぎ捨て、東堂の腰に手を添えて己の猛ったペニスを入り口に宛がう。残り僅かになってしまった理性の欠片を必死に掻き集めながら、彼は最終確認のために口を開いた。

「じゃあ……本当にいいんショ、……ぅあっ!?」

聞いている途中で、我慢できなくなった東堂が両足を巻島の腰に絡めた。瞬間、先端が少しだけ中へと侵入し、巻島が快楽の声を漏らす。一気に押し入ってしまいたい衝動をなんとか踏み留めていると、東堂が腰を押しつけながら巻島を急かした。

「っ、早く……!中、もっと、もっと奥に……ああ!」

ただただ性欲に忠実な東堂の言葉に、巻島の理性はとうとう瓦解した。一息に腰を押し進め、自身のそれで東堂の内部を完全に暴く。男を受け入れて痙攣するそこはしかし存外狭く、巻島のものを食い千切るように締めつけてくる。快楽よりもむしろ痛みの感覚が巻島の分身を襲った。

「き、つ……!」
「あ……はぁ……っ、い、たい……!」

挿入したまま耐える巻島の耳に、微かに湿っぽい声が届いた。はっと我に返って見下ろすと、組み敷いた東堂の閉じた瞼の端から涙が零れ落ちている。そうだ、『彼』は今日『彼女』になったばかりなのだ。魔法の薬のせいで積極的な態度だったが、当然処女ということなのだろう。思い至った巻島が慌てて視線を結合部に移すと、そこからは血の赤がじんわりと滲み出ていた。どうやら性急に突き挿したせいで内部を傷つけてしまったらしい。
罪悪感に苛まれた巻島は濡れる東堂の目元を指で拭ってやろうとした。しかし、今巻島の右手は東堂の腰に回り、左手は東堂を押し潰さないようベッドに付いているために叶わない。ならば、と巻島は唇を寄せ、そっと目尻から涙を吸い取った。まずは右目。次いで左目。口に含んだ塩味を飲み下したところで、目を開いた東堂と視線が交わる。潤んで輝きを放つ青が宝石のようだと巻島は思った。

「東堂……平気ショ?」
「っ、んぅ……痛い、はず……なのに……っぁん!」

言いながら、東堂の腰が揺らめき始める。東堂にとっては、既に破瓜の痛みすら快楽へと変換されていた。理性の消失した身体の動きは見る間に大胆になり、東堂はただひたすら巻島の雄を求め続ける。淫らな熱を渇望するその姿に、巻島もまた動き出すことで応えた。強請るようにひくつく内部に誘われるまま抜き差しを繰り返すたび、肌のぶつかる乾いた音と体液の混じり合う濡れた音が響き渡る。

「あっ、あんっ、あ、また、来る……っ!あっぁっ、もぅ、イ、く……!」
「っ、俺も、そろそろ……っ!」

互いに高まりを目指し、やがて見えてきた限界に、巻島はペニスを外に出そうとした。だが、依然として東堂の両脚は解けない。むしろ先ほどよりもしっかりと腰に絡み付き、万一の可能性を避けようとする巻島の身体を引き止めた。

「東堂、足を放してくれ……!このままじゃ、俺……!」
「っ、いい、から……!あんっ、そのまま……そのまま、中に……!」
「そ、それは流石に駄目だって!っくぅ、東堂、なぁ、頼むから……!」

懇願にも似た声を巻島は出したが、しかし東堂はその首をも腕で引き寄せ、強く拘束した。快楽に染まり切った女の顔が至近距離に近づき、巻島の性感がさらに高まっていく。

「中、っはぁ、中に出してくれ、巻ちゃん……!ぁん、お前が、欲しい……!」
「―――っ!く、あっ、駄目だ、東堂、出っ……ぅああっ!」
「あっ、ゃぁあああーーー!」

耳元に直接叩きこまれた睦言に、ついに巻島の限界が訪れた。それでも最奥に出すのだけは、とぎりぎりまで腰を引いたが、しかし我慢できず結局内部で弾けてしまう。対する東堂も、体内で脈動しながら熱い性を注がれる感覚に今宵四度目の頂点を経験した。無意識にしがみ付いていたその指先が巻島の背中の生地を強く握りしめる。

互いの荒い呼吸音だけが空間を支配した。弛緩し、繋ぎとめる力を失った東堂からようやく解放された巻島がそっと身体を離す。これで終わりであってほしい。いや、まだ抱き足りない。相反する感情の狭間で、巻島はひとり戸惑いを抱いていた。これでは、まるで―――

「もっ、と……もっと、欲しい……!」
「東堂、んぅ……っ!」

巻島が考えに耽る間もなく、事後の余韻に浸っていたはずの東堂が手を伸ばして再び巻島の首を絡め取った。次いでその唇を重ね合わせ、熱く濡れた舌を交わらせてくる。初めて交わす口付けの濃厚さに、再び巻島は欲情していった。それを感じ取ったのか、東堂がまた腰を擦り付け、巻島の雄を呼び覚まそうとする。

「っぁん……欲しい……!もっと、もっと俺を犯してくれ、まきちゃ……!」

すっかり快楽に溺れて正気を失った青い瞳に、今度は巻島の方から口付けて貪り、再び内部へと己を挿入する。腰を動かす最中、東堂と触れ合った何もかもが柔らかくて気持ち良くて、次第に巻島の中から正常な思考が失われていった。

「んぁあっ!まきちゃ、奥、もっと奥、突いてっ、めちゃくちゃに……ああぁあ!」
「っはぁ……東堂……東堂、いい……!お前の中、最高だ……!」

欲望にまみれた東堂の言葉に、巻島の中に残っていた最後の理性の欠片が砕け散った。要望に応えようと巻島が東堂の片足を抱えて開き、一際奥まで穿つ。途端に、東堂がまた悦楽の叫び声を上げる。性急な動きに幾度目かの限界が近づいてくるが、もはやただの男と化した巻島の脳内に万一の事態への配慮などはなく、収縮する東堂の内部に誘われるまま中へと欲を吐き出した。それでもなお、東堂の―――ふたりの熱情は終わりを見せない。ただただ、欲望に忠実に互いの身体をまさぐり、唇を重ね合わせ、体位を変えてはより強い快楽を追求する。意識が失われるまで続いたその行為は、さながら獣のように貪欲で、淫魔が行うものよりも過激だった。

「巻ちゃん、もう散々だったぞ」
「その割にはめちゃくちゃノリノリだったショ」
「それは体がおかしかっただけだ。普段の俺はあんなに淫乱じゃないぞ」
「そんなこと知っているショ」

淫乱な東堂もかわいいと思ったが、口には出さずにいた。



かわいいは作れる
((魔法の薬のせいじゃない愛ゆえ)


20141001/女体化ってかわいいよねっていう話。

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