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5-09:Check.―王朝復活と魔導砲―

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 それにしても、こんな大所帯で移動するなんて初めてだ。
ロイドやリンネがいるなら聞きたいことがあるが、下手に二人を刺激して逃げられては意味がない。
ここは昔の仲間に口を割らせようと思っていたが、誰が声をかけても彼らは何も言わない。
結局は何ともいえない居心地の悪い空気の中、砦の外に出てしまった。

「あ、あの……ロイド……さん」

 砦の門をくぐったところで、エミルが躊躇いがちに声をかける。
あの様子だと喧嘩を売るつもりはないだろうが、何を言うつもりなのだろう。
足を止め、こちらを振り返ったロイドに、エミルは頭を下げた。

「……今までのこと、すみませんでした」

謝罪されるとは思わなかったのか、ロイドが軽く目を見開く。
 リンネもちらりとロイドの方を見れば、ロイドは首を横に振った。

「……気にすることはないさ。俺は最初から説明するつもりがなかったんだ」

「ロイド、リンネ……どうして何も言ってくれないの?」

ぎゅっと祈るようにコレットが手を組む。
良心に訴えるような綺麗な眼差しにロイドがそっと目を細めた。

「我らに話してくれないのか」

仲間達に囲まれて心が揺らいでいるのだろうか。
それでも無言を貫くロイドに、エミルが一歩前に進み出た。

「ロイドさん……。マルタに寄生したラタトスクのコアを取り外すには、全てのコアを孵化させてラタトスクそのものを目覚めさせるしかないんです。あなたは、どうしてコアを集めているんですか?もし僕達で協力できることなら」

「なら、協力してくれ」

エミルの言葉を遮ったロイドが手を差し出す。
握手でもするつもりなのだろうか。

「今すぐ、全てのコアを渡して欲しい」

エミルがその手をとろうとした時、ロイドがそっと目を細めた。
リンネの方はコア探しを諦めたというのは本当らしい。
戦う素振りも見せず、ただ静かにロイドたちを見つめている。
 一瞬にして張り詰めた空気に、マルタが自分を示しながらエミルに並んだ。

「私だけのことじゃないんです!ラタトスクが目覚めれば、世界の異常気象もおさまるんです!」

「それだけじゃ、助けられないんだ」

出した手を握り締め、ロイドがその手を下げる。
その目は苦しげで、悲しげで。

「助けられないって……何をだい?」

しいなが問いかけても、ロイドは答えない。
眉間に皺を寄せて口を噤んだまま。
ラタトスクが目覚めれば世界の異常気象はおさまり、みんなが救われる。
ロイドは仲間を大切にする人。
 かまをかけてみようとアンジェラはそっと口を開いた。

「リンネ・アーヴィングを?」

その名を紡げば、ロイドは分りやすいくらいに動揺を見せた。
飛び跳ねた肩に仲間たちも図星だったと悟ったのだろう。

「どういうことだい、ロイド!リンネ!」

「一体、何があった?」

「話してくれるよね?」

しいな、リーガル、ミトスに詰め寄られロイドが逃げるように視線を逸らした。
リンネの方はやはり顔色一つ変えない。
眉間に皺を寄せるロイドを横目で見るだけ。

「ロイド……」

「今は、何も言えない」

ロイドがちらりとリンネを見、踵を返す。
こちらに背中を向けたロイドの表情はここからは見えない。
彼は、嘗ての仲間を前にどんな気持ちでいるのだろう。
何を隠しているのだろう。
 じっと何も言わない背中を見つめていると、ロイドが駆け出した。

「ロイド!」

「追いかけよう!」

茂みの中に飛び込んだロイドをコレットとロイドが追う。
だがすぐに聞こえたのは甲高い機械音。
あの音は、と考えていると、苦しげなセレスの背を撫でながらゼロスが首を横に振った。

「……無理だ。あいつはレアバードを持ってる。今頃は空の上だろうよ」

「そんな……」

空を見上げたエミルが拳を握り締める。
先ほどまで手の届く距離にいたロイドは今は空の彼方。
呆然と空を見上げるエミルに、ゼロスは堰をするセレスの背を撫でた。

「とにかく一度、俺さまの屋敷で休もうぜ。セレスの体調が思わしくないみたいでね」

「……すみま……せん……ご迷惑をおかけ……して……」

疲れが一気に出てきたのだろう。
懸命に息を整えようとしているが、熱っぽい目はどこか虚ろだ。
苦しげなセレスに、マルタが申し訳なさそうに頭を下げた。

「……本当だ。ごめんなさい、気がつかなくて」

セレスは気にするなと言わんばかりに首を横に振ったが、その顔色は悪い。
このままでは倒れるのも時間の問題だろう。
もう立っているのも限界なのか、ゼロスがセレスを抱えた。

「あんたは一緒に来てくれるんだろうね」

 しいなが視線を向けたのはこの場に残ったリンネだ。
てっきりロイドと共に逃げると思ったが、彼女は黙ってロイドを見送っただけ。
先日、リンネはコアを集めていないと言っていた。
ロイドに任せてある、とも。
鋭い視線に気づいているのだろうか。
 リンネが口を開こうとしたそのとき、茂みから一人の騎士が飛び出してきた。

「リンネ様!」

銀色と緑の鎧ということは、マーテル騎士団だろう。
声色からして男性と思われる騎士はゼロス達を見て驚いたようだが、すぐに敬礼をしてリンネに向き直った。

「定刻を過ぎたので偵察に参りました。中の様子はいかがでしたか?」

国王が手配していた、という騎士だろう。
 リンネは思考を巡らせるように背後にあった砦を見、首を横に振った。

「思ったほどの収穫はなかったよ。ヴァンガード幹部の捕獲にも失敗したし」

言って彼女は砦でのことを的確に報告し始めた。
お飾りの復興大使、と言われていたはずだが騎士と接するリンネはしっかりしている。
内部にあった資材の数、敵の数、規模。
なかなか姿を現さなかったのは偵察目的が大きいからだろう。

「まだ残党がいるかもしれない。工作員は発見次第、拘束。殺さないで。私もすぐに行くから」

「了解です」

「待って!」

騎士を追って歩き出したリンネをマルタが止める。
この様子なら話を聞けるのではないだろうか。
そんな期待のこもった目を見てもリンネは首を横に振り、再び歩を進めた。

「仕事があるから」

「気をつけろよ」

意外なことに、笑顔で送り出したのはゼロスだった。
しいなたちも意外だったのだろう。
息を呑む仲間たちに気づかないふりをしてゼロスは手を振っている。

「いってきます」

ひらひらと手を振るゼロスにリンネは頷いて駆けていく。
 こんな簡単に婚約者を行かせていいのだろうか。
それとも、やはりゼロスは何か知っているのだろうか。

「ゼロス、いいのかい?」

「いいんだよ。今はそれよりセレスだ」

慌ててしいながゼロスの顔を覗き込むが、彼はへらへらと笑うだけ。
セレスもリンネが気になるのだろうか。
リンネが消えていった方角をちらりと見た後、申し訳なさそうに俯いた。

「申し訳ありません、お兄様……」

「いいんだよ。またすぐ会えるから、心配するな」






「おお、セレス様……!ご無事で何よりでございます!」

 扉を開ければセレスの執事、セバスチャンが駆け寄ってきた。
心配していたのだろう。
憔悴しきったそのトクナガは目元を覆った。

「トクナガ……心配をかけて……ごめんなさい」

「トクナガ、セバスチャン。セレスをベッドへ」

「かしこまりました」

とはいえ、いつまでもこんなところで感動の再会をしているわけにはいかない。
ゼロスが二階を促せば、セバスチャンは近くにいたメイドに声をかけた。
執事だけでなく、メイドたちもみな心配していたのだろう。
足早に働くメイド達の中には目に涙を浮かべる者もいた。

「あの……エミルさん」

 セレスがゼロスの腕を引けば、意図を察したのかゼロスがエミルの方を向いた。
熱が上がってきたのだろうか。
その顔色は砦を出てきたときより赤らんでいる。

「事情はお兄さかまから伺いました。グラキエスのコアとやらはあなたに差し上げます。頑張って下さい」

「あ、ありがとうございます!」

声が上ずっていたのは緊張のためか、それともコアのことを忘れていたためか。
セレスが姿勢を正したエミルに小さく笑うと、ゼロスが再び踵を返した。
 ずいぶん時間がかかってしまったが、これで無事グラキエスのコアは回収完了。
これで半数を超えたコアが手元にあることになる。
だが、残りのコアを回収するのは今までのようには行かない。
アクアはリヒター、ソルムはデクス、そしてルーメンはロイド。
これらを手に入れるには持ち主を倒さなければならない。
となると、次に狙うのは雷のセンチュリオン、トルニスが妥当だろう。
 ゼロスが戻るまで、ということで待たされたのは広い客間だった。
ベッドのように柔らかなソファに金の装飾の施された机。
贅沢を絵に描いたような光景だ。
 メイドが淹れた紅茶をじっと見つめていると、この家の主が部屋に入ってきた。

「しかし面倒なことになったな。シルヴァラント王朝か……」

上座のソファに腰かけ、ゼロスが頬杖をつく。
気怠そうな言葉とは裏腹に、その眼は鋭い。
今、彼の頭の中には様々な考えが駆け巡っているのだろう。
ややあって、彼は大きく息を吐き出した。

「世界が二つに分かれてた頃、シルヴァラントで何が起きたのかなんてこっちには分かんねぇが、奴らがマーテル教会に復讐しようとしてるってことは確かだな」

「ラタトスク・コアも王室の復興に使おうとしているの?」

ヴァンガードの総帥として、世界を脅かす父親に責任を感じているのだろう。
密かに唇を噛みしめるマルタに気づかないのか、エミルが首を傾げた。

「……うん。ラタトスク・コアを使ってマーテル教会を滅ぼそうとしてるの。それだけじゃない。テセアラ王室も」

「ラタトスク・コアでそんなこと出来るの!?」

「魔導砲っていう武器に使うみたい」

俯きがちにマルタがアンジェラを見る。
マルタはヴァンガードでは形だけの秘書をしていた。
 こういった内部事情はアンジェラの方が詳しいだろう。
アンジェラがヴァンガード工作班班長だったのは周知の事実。
変に隠すより堂々と言ってしまった方がいい。

「統一政府がないシルヴァラントは、テセアラに力を誇示するため魔導砲を利用するの。コアはそのためのエネルギー源よ」

「前にアンジェラが言ってた古代の兵器ってやつ?」

 カミシラ山地での話を覚えてくれていたらしい。
そうよと頷けば、しいなが頭を抱えた。

「なんてこった……」

「知ってるんですか?」

 呟くように零したしいなの顔は険しい。
ミズホの民は魔導砲のことまで知り尽くしているのだろうか。
しいなは顔を上げ、小首を傾げるエミルたちに頷いた。

「あたしは使ったことがあるからね。あんなもの、悪用されたら世界が滅びかねないよ」

聞けばあの大樹暴走を消し去ったのはしいなの撃った魔導砲らしい。
陽のマナによって暴走した大樹を陰の精霊であるセルシウス、ノーム、ヴォルト、シャドウをぶつけて相殺したとのことだ。
簡単に説明してくれたが、四体の精霊を同時に召喚する召喚師など聞いたことない。
何度も落とし穴に落ちてもやはり召喚師としての腕は確かなのだろう。
 内心感心していると、ゼロスが長い息を吐いた。

「……俺さまはこのことを教会の奴らと陛下に伝えないとな」

ヴァンガードが魔導砲を手に入れれば、全面戦争になりかねない。
今やヴァンガードの拠点は全世界に広がっているのだから。
そんな危険な話を聞けば神子が動かないわけがない。
コレットも祈るように手を組んで頷いた。

「私も、イセリアに戻って伝えてくる。できればリフィル先生にもお話を聞いてもらいたいけど……」

「そっちはミズホの連中に頼もう。捜し出して伝えてくれるはずさ」

胸を張り頷くしいなにコレットが安堵の息を零す。
コレット一人で世界を探すより、ミズホの民に探してもらった方が効率がいい。

「争いの芽は、早く摘まなくちゃね。取り返しのつかないことになる前に」

静かな声のミトスだが、その眼は使命感に燃えていた。
古代戦争の事を思い出しているのだろうか。
静かに握りしめられた拳には、かなりの力がこもっているように見える。

「エミル、お前たちはこれからどうするのだ?」

 これで三人の今後は決まった。
リーガルに問われたエミルは僅かに頷いたが、彼の目標が変わるわけがない。
考えるように視線を走らせたものの、すぐに口を開いた。

「僕は……僕は、マルタと一緒にコアを集めます。そうすれば、ラタトスクを解放出来て魔導砲も使えなくなるから。……ね、マルタ」

「……う、うん……」

いつもの元気がないのは、父親のことを気にしているからだろう。
表情を曇らせるマルタにリーガルは力強い笑みを浮かべた。

「ならば、私も引き続き同行させてもらおう。今のロイドが何を考えているのかはわからぬ。だがお前達とロイドが相対したときは、助けてやれるかもしれぬ」

戦力や精霊の祭壇への道案内もリーガルがいれば心強いだろう。
仲間と戦うのは辛いだろうが、来て貰えるなら来てもらった方がいい。
 お願いします、と頷くエミルにしいなも頷いた。

「……そうだね。あたしも一緒に行くよ。あたしなら魔導砲のことも知ってるし」

にこやかに口を開いたしいなだが、その表情が徐々に険しくなる。
一緒に来てくれる理由はそれだけではないのだろう。

「……それにロイドの奴が何を考えてるのか分らない以上、あいつに協力は出来ないよ」

「俺さまはパス。ロイド君が狙われてる以上、ロイドの味方になってやりたいしな。つーわけで、ロイドを追うぜ」

 ひらひらと手を振るゼロスにしいなが口を開いたが、何も言わずに口を閉じた。
ゼロスの意見もわかっているから何も言えないのだろう。
ロイド・アーヴィングは何も語らない。
リンネの方は少しは話してくれるようになったが、まだまだ分からない点が多い。
全員でコアを探すより、リフィルたちのように別行動でロイド達を追ってもらった方がいいだろう。
それに、人の心の内を探るような神子と行動を共にするのは正直辛い。

「……私もゼロスと同じだな。私、ロイド達を信じてる。絶対信じてる。だから追いかけて、協力したい」

 コレットが不安げに祈るような手に力を込める。
ロイドの方もアンジェラ達が追いつめるよりコレットに問い詰められた方が効果ありそうだ。

「僕も約束があるし、コレットを守らないといけないからね。ロイド達を追うよ」

そっと腰の剣に手を触れ、ミトスが微笑む。
彼がいればヴァンガードに狙われても大丈夫だろう。
コレットと顔を見合わせて頷きあったミトスは、紅茶を飲むゼロスに視線を向けた。

「それにヴァンガードに狙われてる二人が一緒なら手間がはぶけて嬉しいよ」

「え〜?お前がいなけりゃ、コレットちゃんと二人っきりになれるのに」

「だからに決まってるだろ。あほゼロス」

口を尖らせたゼロスにミトスがにっこりと笑う。
笑顔なのに威圧感があるのはさすがといったところだろうか。
口元を引きつらせるゼロスをしいなが睨みつけた。

「リンネの方は追わなくていいのかい?」

 しいなの指摘は尤もだ。
あの時、リンネ・アーヴィングの名を出したときロイドは明らかに動揺してみせた。
ロイドがコアを回収しているのはリンネが関係あるのだろう。
だがリンネの方はロイドにコア集めを任せているのだという。
コアに心を壊されない為かもしれないが、それはロイドも同じことだ。
それなのに何故、ロイドだけがコアを集めているのだろう。
今までは聞きたくても行方が分からなかったが、今ならリンネを追うことは出来る。
集まる視線にゼロスはゆったりした動作で紅茶を口に運んだ。

「追うも何も、ハニーは騎士団を率いてお仕事してんだ。邪魔しちゃ悪いし、話ならいつでも聞けるだろ?」

「だが、ロイドがコアを集めているのはリンネを救うためではないのか?」

「悪いな。これ以上は契約があるから話せねえんだわ」

「契約って、なんだいそれは?」

リーガルの言葉にゼロスが手をひらひらと振れば、軽い調子のゼロスをしいなが強く睨んだ。
ゼロスは何か知っていると、しいなも気付いているのだろう。
のんきに紅茶を飲むゼロスにしいなが再び口を開いたとき、ミトスが静かに口を開いた。

「みんなを守るために、ボクらが交わした約束だよ」

「約束ってなんのこと?」

わけがわからない、と困惑した様子のエミルにミトスはただ微笑むだけ。
だが言えない理由があるのあろうか。
仲間たちに見つめられても二人は何も言わない。
 ややあって動いたのはゼロスだった。

「信じてくれ、なんて言わねえよ。ただ、リンネとロイドの事は信じてくれ」

苦笑してゼロスが仲間たちを見つめる。
秘密を知るのがゼロスとミトスでは聞き出すのは難しいだろう。

「わたし、信じるよ。ロイドとリンネのことも、ゼロスとミトスのことも」

どうしようかと考えている間にコレットは答えを出していた。
実にコレットらしい答えだ。
いつものように優しく微笑むコレットにミトスが安堵の息を零した。

「ありがとう、コレット」

「いつか、話してくれるんだろうね」

「ま、いつかはな」

ゼロスを睨むしいなだが、その眼は先ほどと違い優しげだ。
こんな不明瞭な説明で納得したのだろうか。

「コレット達は、それでいいの?」

「うん。わたしはみんなを信じるよ」

不満げなエミルにコレットが満面の笑みで頷いた。
まだ納得いかないような表情だが、この笑顔には何も言えないのだろう。
エミルは何か言いかけたマルタとともに口を閉ざした。

「では、これでまたお前たちとは暫しのお別れだな」

「ま、元気でな」

再会しては別れ、忙しい人達だ。
それでも動揺しないのはお互い信頼しているからだろうか。
頷きあう二人を見守っていたコレット達が微笑んだ。

「みんな、無事でいてね」

「でも、無茶しないでね」

ルインを旅立った時は三人だけだったのに、今はこんなにも協力者がいる。
沢山の協力者たちにエミルは嬉しそうに笑った。

「ゼロス、コレット、ミトス……。ありがとう」

「パパが迷惑かけてごめんなさい」

嬉しそうな反面、マルタの方は悲しそうだ。
すべての元凶はヴァンガードであり、ブルートだと言っても過言ではない。
俯くマルタの肩をゼロスがそっと叩いた。

「親に振り回される子供ってのは辛いよな。元気出せよ、マルタちゃん」

優しい声と言葉に、マルタの顔がゆっくりと上がっていく。
彼も両親との間には確執があったと聞いたことがある。
喋ると三枚目だが、こうしているとそれなりに見えるから人間というものは不思議だ。
ゼロスの言葉に少しは心が軽くなったのだろう。
笑みを零すマルタに、ゼロスは満足げに頷いた――――




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