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4-03:Rosemary. ―確かめる、信じる―

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 カンベルト洞窟は洞窟というより森に違い場所だった。
木々に遮られながらも微かな日差しが差し込む中、辺りを見渡してもローズマリーは見当たらない。
もう少し奥に行けば見つかるだろうか。

「……この辺りには生えていないようね。奥へ行きましょう」

「リフィルさん、あの……」

エミルが先に進もうとするリフィルに声をかければ、彼女は何かしらと振り返った。
穏やかに微笑む彼女からは、先ほどの挑発するような言葉は出てきそうにない。
あの時とは違う雰囲気に躊躇っているのだろう。
言い淀むエミルの気持ちを代弁するようにジーニアスが口を開いた。

「姉さんさっきわざとエミルを怒らせたでしょ。その話だよ」

「どうしてあんなことを……」

マルタも気になっていたのか、困惑した様子でリフィルを見つめている。
聞いて答えるような単純な理由ならいいのだが、彼女は答えてはくれないだろう。
アンジェラも何も言わずに見つめていると、リフィルは意味ありげに微笑んでみせた。

「あら、少なくともさっさと旅を進めましょうというのは本音だったわよ」

「姉さん!」

冗談にしてはすぎる。
そう言わんばかりの弟の反応にリフィルは小さく笑い、その視線をエミルに向けた。
挑発するような鋭い目ではなく、子供を見守るような優しい目で。

 「ふふ。エミル、あなたは嫌がるかもしれないけれど、さっきのあなたロイドと同じことを言っていたわ」

「え?」

思わぬ言葉に、エミルが目を丸くする。
イセリアでもエミルがロイドと同じことを言った、と聞いた。
ロイドは世界統合の英雄。
だがエミルにとってロイドは憎き仇。
自分が恨む相手と発言が同じと言われて嬉しいわけがない。
眉を寄せたエミルに、リフィルは昔を懐かしむようにそっと微笑んだ。

「目の前の人間も助けられなくて、世界再生なんてやれるかよ……ってね」

「……ロイドが……」

肩を落としたエミルの拳は固く握られている。
アンジェラはロイドが血の粛清を引き起こした犯人ではないと知っているが、エミルは真実を知らない。
エミル・キャスタニエにとってロイド・アーヴィングとは誰がどう評価しようと両親の仇なのだ。

 「さ、行きましょう」

何も言い返さないエミルを置いて、リフィルは一人で歩き出した。
今の会話で分ったことといえば、エミルはロイドと似ているところがあるということぐらいだろうか。
中々手ごわい相手だと、アンジェラは肩をすくめて笑った。

「結局何も分らなかったわね」

「……はぐらかされちゃった感じ?」

「そうだね……」

マルタが首を傾げ、エミルが大きくため息をつく。
挑発された理由が分らず、釈然としないのだろう。
再び肩を落としたエミルを見、ジーニアスはそっと息を零した。

「……姉さん……」


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