2-12:Resemble.―学者と少年―
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「じゃあテネブラエ、お願い出来るかしら」
「ええ、」
「こんなの、私が開けてやるわよ!」
テネブラエが頷いたと同時にアクアが現れ、石舞台の中心で手を翳した。
マナで何らかの操作をしているのだろう。
アクアの手に反応した石舞台の紋様が淡い青の光を放ち、あの時と同じように移転陣が浮かび上がった。
「これくらい余裕です」
自慢げに胸を張り、アクアが笑う。
リヒターの方を見て言ったのは彼に褒めてもらいたいからだろう。
アンジェラはにっこりと笑みを浮かべた。
「すごいわーアクアちゃん」
「そうですね。これくらいセンチュリオンなら出来て当然です」
「アンタ達、何よその言い方!馬鹿にしてんの!?」
せっかく褒めたというのに、何が気に入らなかったのだろう。
テネブラエの挑発が気に食わなかったのだろうか。
心外だわ、とアンジェラは眉をひそめてみせた。
「そんなことないわよ。とっても感謝してるわ」
「そうですね。アクアのおかげで私も余計な力を使わずにすみましたし。いやぁ、ありがたいありがたい」
「っ!この陰険コンビ!!」
テネブラエと共に頷き合えば、アクアが大きな声を上げた。
陰険だなんて心外だ。
そう思って口を開きかけたが、それより早くリヒターが口を開いた。
「やめろアクア、相手にするな。時間の無駄だ」
もう慣れてしまったのだろう。
アンジェラ達を軽くあしらい、リヒターの姿は移転先に消えていく。
とはいえ、リヒターの言う通り時間を無駄にするわけにはいかない。
いくら町長が足止めをしてくれているとはいえ、限界は来るだろう。
「アンジェラ、楽しそうだね」
一歩前に踏み出せば、エミルが笑っていた。
確かにリヒターと一緒にいられるのは嬉しいが、エミルに悟られるほどはしゃいだつもりはない。
「そうかしら?いつも通りだと思うけれど」
気のせいよ、と微笑んでアンジェラは移転陣に足を乗せた。
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