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2-10:Embarrassment.―不可解な心、戸惑う心―

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 地上に出れば、石舞台には眩しい陽の光が降り注ぎ、穏やかな風が吹いていた。
しばらく石舞台で様子を見ていたが、インセインの来る気配もない。
これでこの街も平和な街に戻るだろう。
 足取りも軽く、町長を訪ねて事件解決を報告すれば町長は目を輝かせ深々と頭を下げた。

「……それでは、これで石舞台は安全なのですな!ありがとうございます」

「いいえ。お役に立ててよかったです」

にっこりとコレットが微笑めば、町長は顔を上げて再び礼を言い、顔を上げてこちらを見た。

「そこの三人も、神子さま達と共に街のために尽くしてくれてありがとう」

「い、いえ……」

心からの感謝を述べる町長に、エミルがたじろぐ。
ルインに住み始めてから住民は勿論、叔母夫婦にまで忌み嫌われていたエミルだ。
感謝されるのに慣れていないのだろう。
痒くもない頭をかいていると、マルタがおそるおそる口を開いた。

 「あの、町長。ヴァンガードたちは……」

「……あらかた出て行ったが、まだ気をつけた方がよかろうな」

マルタの問いに町長の顔が曇る。
この街にヴァンガードの拠点はないが、影響は受けているのだろう。
町長は肩を落として俯いた。

「恥ずかしい話だが、この街の住人もヴァンガードに感化されている。神子さまやマーテルさまをないがしろにする者が増えてしまって嘆かわしいことだ……」

大きなため息を零す町長に、マルタが拳を握りしめて俯く。
父のことを思い出しているのだろう。
苦しげに握られた拳は震えていた。

「……テセアラとシルヴァラントの文明レベルは……差がありすぎます。ヴァンガードが謳うシルヴァラントの解放は魅力的に聞こえるんでしょうね」

小さな、けれど怒りが込められた声にコレットも何か感じたのだろう。
コレットは胸元で手を組み、そっと目を伏せた。

「……マーテル教会もテセアラを偏重する人たちが増えました。ごめんなさい。私の力不足で」

「違います。それは違いますぞ。神子さまは二度もこの街を救って下さった。どうかご自分を責めないで下さい」

「そうね。貴女が自分を責めても状況は変わらないもの」

苦しげなコレットに町長が首を横に振り、アンジェラも息を吐きながら頷く。
この世の中にはどうにもならないこと、理不尽なことは沢山ある。
そんなことに一々心を痛めていては身が持たないだろう。
思ったことを正直に言えば、少しは慰めになったらしい。

「ありがとうございます町長さん、アンジェラ」

コレットは少しだけ微笑んで町長宅を後にし、アンジェラ達も彼女に続いて外に出た。




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