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2-09:Study.―騎士として、人として―

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 風属性のソーサラーリングが仕掛け解除の鍵となっていた。
ある時は風で壁を壊し、ある時は鐘を鳴らす。
そうして進んでいくと今までなかった赤い移転装置が見つかったが、移転装置を使って辿りついた場所も長い道が続いていた。

 「……まだ続いてる……ってことはまだ戦うってことだよね……。怖いなぁ……」

「エミル、しっかり!私、キミのこと頼りにしてるんだぞ」

「うう……善処するけど……」

肩を落とすエミルにマルタが語尾にハートマークをつけて応援するが、エミルの肩は落ちたまま。
入ってかなりの時間が経過したが、一向にコアの祭壇は見えてこない。
終わりが見えないのが不安なのだろう。
それでも前に進むだけまだましだが、この足が止まったらどうなるだろう。

「このまま一生出られなかったりして」

「へ、変な冗談言わないでよ!」

ぼそりと、エミルに聞える程度の声で呟けばエミルが勢いよくこちらを向いた。
声が若干裏返っているのは気のせいではないだろう。
ごめんなさい、と笑えばエミルは再び肩を落とした。

 「……けど、なんか魔物、多いね。これってウェントスのコアのせい?」

連戦の疲れが出てきたのだろう。
マルタが息を零せば、エミルがそうか、と顔を上げた。

「センチュリオンは孵化させないと、コアの状態だと力の制御ができなくて、魔物を呼び寄せちゃうんだっけ……」

「そうですね。おそらく石舞台のインセインもウェントスの暴走に引き寄せられていたのでしょう」

エミルが視線を向ければ、テネブラエが迷わず頷いた。
このままコアを放置すれば魔物は増え続け、マナのバランスも崩れ続ける。
なんとしてもコアを手に入れなければ。

「うう……怖いけど……頑張ろう。勇気は夢を叶える魔法だ」

エミルは拳握り、リヒターから貰った言葉で自らを奮い立たせるように大丈夫、と呟いた。
アステルの言葉には力強さがあったが、エミルの言葉は弱々しく頼りない。
声も言葉も同じだが、言う人が違うとここまで印象が変わるものなのだろうか。
不思議なものだと感じていると、コレットがエミルを見て微笑んだ。

「それはセンチュリオンの誓い?素敵だね」

「あ……ううん。僕のお守りの言葉」

柔らかく首を横に振り、エミルは胸元に手を当てた。
彼にとってリヒターに言われたあの言葉は、大きな存在なのだろう。
穏やかな表情がそれを物語っている。

「それって、アンジェラも知ってる言葉なんだよね」

「ええ。そうね」

いいなー、と羨ましそうなマルタにアンジェラはただ笑う。
エミルとアンジェラだけが知っていた、というのが面白くないのだろう。
少し口を尖らせたマルタにエミルは笑った。

「男ならはっきりする!……も入れとこうか?」

意味が分からなかったのか、マルタが小首を傾げたがすぐにその言葉が何なのか分かったのだろう。

「……もう……馬鹿!」

怒りか照れか、おそらくはその両方であろうマルタは顔を赤くしてエミルを睨んだ。


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