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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 満足げなポールに見送られ、リンネ達は歩きだした。
人影があまり見えないのは皆家に帰っているからだろう。
時刻は夕暮れ。
夕飯の支度をしている時間だった。
リンネも早く家に帰って夕飯の支度をしたい所だが、帰るまでに行きたい場所がある。
ロイドには先に戻ってもらおうと口を開きかけたその時。
会いたい人物の声が聞こえた。

「また、騒ぎを起こしたのかお前らは」

低い声に、思わず背筋が伸びる。
振り返ると不機嫌そうな目がじっとこちらを見ており。
冷たい目に逃げたくなる気持ちを抑えてリンネは微かに唇を噛みしめた。

「またって、俺たちは何も」

「村長、この度はルイン行きの支援ありがとうございます」

前に出かけたロイドと止めて、リンネは村長に向かって頭を下げた。
彼の支援がなければ、牧場の人々の帰郷はもっと先延ばしになっていただろう。
だがリンネが頭を下げても村長は何も言わない。
 長い長い沈黙の後に、村長が大きく息を吐いた。

「あの人数分の支援をするのだ。しばらくこの村ではろくなものも食えん。その意味が分かるか」

冷たくも厳しくも思える言葉だが、村長の言う事は何も間違っていない。
もうマナを搾取し合う世界でなくなったとはいえ、まだ作物は豊富ではない。
ただでさえ、ディザイアン襲撃による傷がいえきっていない所に大量の難民を受け入れたのだ。
そして今度は帰郷する人々の為に食料を分け与える。
それでも、みんなは協力してくれるのだ。

「ご支援、決して無駄にしません」

顔を上げてまっすぐに村長の目を見つめる。
まるでリンネを吟味するかのような村長の視線が痛いが、この視線から逃げてはいけない。
絶対に。
 どれほどの間見つめ合っていたのだろう。
ややあって村長が溜息を零して踵を返した。

「死ぬなよ」

聞こえた言葉は小さな小さな声。
でもそのぶっきらぼうな言い方はどこか優しい。
聞き間違いだろうかとも思ったが隣をみればロイドも目を丸くしており、リンネ達は思わず顔を見合わせた。

「……なんか、村長ちょっと雰囲気変わったか?」

「認めてくれたってことかな……?」

以前なら嘲笑されて終わりだっただろう。
でも村長は帰郷する人間牧場の人々の為に協力してくれる。
リンネ達に死ぬなと言ってくれた。

「だといいな」

言ってロイドは小さく息を零して笑った。
あの一件で村長の中でも何かが変わり始めているのだろう。
以前の見下すような冷たい目の村長は好きではなかったが、今の村長なら好きになれそうな気がする。
彼の異常なまでのよそものを遠ざけるような物の言い方は、村の人々を守る為。
根底にあるのは村を守りたいという意志なのだから。
世界統合はリンネ達だけでやり遂げたのではない。
傍で支えてくれる人がいて、影で支えてくれる人がいたからこそ成し遂げられた。
そしてこれからの世界に必要なのは、そうした誰を思いやる心だ。

 「ロイドもありがとう。一緒にルインに行ってくれるんだよね」

「なに言ってんだよ。ドワーフの誓い第一番!忘れたのか?」

協力してくれるのは村長だけではない。
父と交わした大事な約束の旅を遅らせてまで、ロイドも人々の帰郷の為に力をかしてくれる。
旅を遅らせてしまう事を申し訳なくも思うが、これは一人でやり遂げられないことも確か。
こんなにも頼れる弟を持って本当に幸せだなと幸せを噛みしめながらリンネは頷き、大切な弟と共に口を開いた。

「「平和な世界が生まれるようにみんなで努力しよう」」





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