高校生女子の平均程度しか身長がない私と男子の平均を優に超えた長身の黄瀬。このくらい身長差があれば何かしら不都合が生じるものだろうが、今まで私がそれを感じたことはない。 「黄瀬って脚長いよね」 「そりゃまあ、モデルなんで」 「うわ、腹立つ」 脚の長さからして違う二人の歩幅が同じであるわけがない。あまりに自然で気にも留めなかったけれど、ずっと歩調を合わせてくれていたのだろう。ひとつ気づいて、思い返してみれば湧き水のように溢れる何気なく過ごす日常のなかに紛れた小さな気遣い。そういう細やかな心配りが黄瀬涼太という人間をより魅力的にみせているのだと思う。 「黄瀬がモテるのも納得。やさしいよね」 「え、いきなり何?別れ話っスか?!」 「どうしてそうなるの、ばかだなぁ」 私の言葉ひとつでくるくると色を変える表情。然り気無く車道側を歩く心遣いと、当たり前のように合わせた歩調。バスケをしている姿からは想像できない、壊れ物を扱うように躊躇いながら触れる指先。どれをとってみても彼が私を想ってくれているのがわかる。 「いつもありがとう」 「…何か悪いものでも食べた?」 「ぶつよ」 仕草で、言葉で、特別なんだって伝えてくれるから。惜しみない君のやさしさで、私はかわいい女の子になれるんだよ。 どこまでもやさしいね/慈愛とうつつ様に提出させていただきました。ありがとうございました! |