夏が運ぶ風(4/5)



もうすぐ花火が上がるらしい。人出もピークで地面を見ることさえ出来ない。なんとか一番花火が綺麗に見られるという場所に来れたがそこも人、人、人。目の前に広がるのは頭の大群。まぁ花火は空に上がるものだし気にならないだろう。何万もの人が一斉に上を見ている姿は笑いものだ。八重はと言えばまだ始まってもいないのに空を見てる。何を見ているのかと思えば、夏だからレギュラスがいないね、とか。


*


もうすぐお祭りの最大の目玉、花火が打ち上がる。上手く人の波に乗って一番綺麗に見られる場所に着いた。まだ花火が打ち上がる時間ではないけど、空を見上げて目当ての星を探す。癖になってしまっているその行動は夏の空では意味がない。レギュラスと同じ名前の星は春の空にいるから。レギュラスにその事を伝えると何故か黙ってそっぽを向いてしまった。いや、黙ってるのはいつものことだけど、顔を背けられるのは地味に傷付く。





喧騒に紛れて





「傷付くんですけど〜」
「……」
「無視するのやめて!」
「……、」
「あー!もうほら、花火始まっちゃっ……」
「…空見ろよ」
「いや、だって……手」
「上見とけって」
「んふふふ、はーい!」
「指絡めないで」
「わー!花火綺麗だねー!」
「………うん」



その手は離れず絡み合う。汗が混ざりあっても繋がれたままだった。









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