小説 | ナノ




39



「では――、シルヴィアはそれでいいんだね?危険がないとも限らないよ」


老人は柔和な笑みを浮かべたまま言った。


「はい。私は、両親と暮らしたいです」


少女の紅い目は真剣で、過去に施設で見せたような遠慮はない。

9代目が小さく溜め息を吐くと同時に、腕を組んでじっと話を聞いていたザンザスは、そっと隣に座るシルヴィアの肩に手を回して引き寄せた。


「もうテメエの好きにはさせねえよ、ジジィ」


「…うん、邪魔はしないよ。どんな理由があろうとも君達の時間を奪ってしまったのは私だ。すまない」


「…ふんっ」


引き寄せられて密着した左胸は、少し鼓動が早いような気がする。


(…パパン…緊張してる?)



そっと顔を見上げると、こっちに気付きすぐに顔を背けた。




「帰るぞ」





◇◇◇◇◇


ガタンッ


ドサッ



「あら、やだスクちゃん大丈夫?」



ルッスが大きな包みを持ったまま近寄ってきた。


「…っ…あぁ、…ちょっと目眩がしただけだぁ」


大小様々なラッピングされた箱を床に散らばらし、スクアーロは右手と両ひざを床についていた。


「…箱は無事のようね」


ルッスは手際よく持っていた包みをソファに置くと、スクアーロを立ち上がらせ散らばった箱を拾った。



「具合でも悪いの?」


「いや、平気だぁ。…それより多すぎねぇ?」


スクアーロは部屋の中を見渡した。部屋の中心には装飾された大きな木があり、その下にはたくさんのラッピングされた袋や箱が並ぶ。


「親子で過ごす初のクリスマスだもの、当然よっ」


やたらと周りが張り切っているが、今日はスクアーロも楽しみにしていた。



「あらやだ、ちょっとスクちゃん顔色悪いわよ。少し座ってなさい」



そう言ったルッスの声は少し遠くに感じた。


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