37 夕暮れ時になり、執務室は急激に冷え込んだ。スクアーロを呼んで暖炉の火を入れさせようかと思っていたが、扉の向こうで人の気配がした。 しかし気配はうろうろと彷徨うばかりで一向に入っては来ない。 スクアーロかとも思ったがアイツがそんな入室を躊躇うはずもないだろうし、そもそもその気配はかなり小さい。 静かに扉を開けると低い位置に小さな銀髪があり、こちらに気付くとはっと顔を上げた。 「あっ…あのっ…入ってもいい…?」 「…ああ。」 もじもじとスカートを掴む手が、なんだか懐かしい気がする。スクアーロも昔は緊張すると服の裾を掴む癖があった。 (似てんだな) 部屋に招き入れると、流石に寒いので自分で暖炉に薪を組む。そうしているとシルヴィアが隣にしゃがみこみ、火かき棒を手に取った。 「あんまり詰めちゃダメ…。うまく火が回らないから」 そう言って灰を寄せた。 「そうか。」 「やったこと無いの?」 「ああ。部下がやるからな」 「ふふっ、変なの」 ザンザスが着火材に火を灯すと、薪の中にくべた。 部屋全体がポウっと明るく優しい光に包まれ、2人の頬を赤く照らした。 白い頬を赤く染めて、火を見つめながらシルヴィアが口を開く。 「…なんとなく、だけれど気付いてたの。」 「なんだ」 「ここのみんなも、お祖父さんもマフィアなんでしょう?」 「そうだ」 「…やっぱり…」 (カス鮫が賢い子、と言ってたな。なるほど) 伏せ気味の長い睫毛は暖炉の灯りでキラキラと光る。 「私は、邪魔じゃないですか?」 不意にこちらに向き直り、真っ直ぐにそう聞いてきたのでその時は自分がどんな表情をしているかなんて気が回らなかった。 [mokuji] [しおりを挟む] TOP |