小説 | ナノ




34


彼が来てからみんなが忙しなくなる。


「ししっ、ボスはシルの隣に座る?」
ベルが立ち上がって椅子を寄せた。

「ボス、どうぞお掛け下さい。」
レヴィが椅子を持って来た。

「ボスぅ、お料理どうぞ」
ルッスが皿に料理をよそった。
(…お肉ばっかり!)


「ほら、ボス座れぇ」
ママンが彼の手を引いた。



(まるでさっきの私…)



一気に主役の座を奪われた気がして、シルヴィアはじっと彼を見つめていた。




気付いたことがある。
両目がシルヴィアよりも深いルヴィの色をしていること。
眉毛が2つに割れていること。
たくさんの傷跡があること。
ママンよりも見た目が少し若いこと。
みんなに『ボス 』と呼ばれていること。




「あ、ボスこれうめぇぞぉ。食えよ」

そう言ってスクアーロが新しい皿に料理を乗せた。



(ママンもボスって呼んでる…)



じっと見つめていると、彼が口を開いた。


「俺の顔に何かあんのか?」


突然話かけられてシルヴィアは慌てふためき、フォークを落としてしまった。


「え…、あっ…あの……」


「ボスッ!威嚇すんなよ。怖がってんじゃねぇかぁ」


スクアーロがフォークを拾い、新しいフォークをシルヴィアに手渡した。



「…大丈夫だぁ…怖くねぇぞぉ?」


両手でシルヴィアの手を包み込むと、そう囁いた。



(…怖くない…)



「あの……あなたが私のお父さん、ですかっ」


シルヴィアは顔を真っ赤にして漸く言葉を発した。


「あぁ。そうらしいな」


ザンザスがフォークを置いた。

「私は、本当にここに住んでもいいんですかっ?」


「構わねえ。だが、色々覚えることがあるぞ。自分の身を守る為だ。…できるか?」


紅い目がジロリとシルヴィアに向けられた。


「頑張ります。頑張るから、一緒に暮らしたいですっ」








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