31 ―はっきり言って、ガキは嫌いだ。 8年氷らされて目覚めたら自分のガキがいました、なんてファンタジック。 しかし最近、以前のように苛つくこともなくなり子供がいることを思いの外受け入れられた自分に驚いた。 エゴを押しつけるだけの存在というものしか親に対する印象がなく苦手だった。ザンザスにとって、親子としての接し方・距離感なんて全く分からない。 しかしスクアーロに『ここで子供と一緒に暮らせばいい』と言ってしまい、さらには今日いきなり連れて帰るというのだ。 これでは心の準備も何もない。 (まぁ、カスどもがなんとでもするだろう) そんなことを考えながら階段を降りていくと、目の前に小さな銀髪が現れた。 「!」 振り返ったその子供は、スクアーロによく似た顔立ちで薄い唇につり目、白い肌、それから…自分と同じ紅い瞳。 (本当に、ガキがいるんだな…) その子供を自分の目で見て初めて実感が湧いた気がする。 トクン スクアーロと、自分の子供がいるという事実にじんわりと湧き上がるこの胸の熱い感じは何だろうか。 (…ふん) 通り過ぎざまに、こちらを見上げて固まっている子供の頭を撫でた。ふわりと柔らかい子供の髪の毛が、少し昔のスクアーロのようでドキッとした。 (…そういえば名前はなんというんだ?) 背後でスクアーロの声がしたときにふと気付いた。 肝心なことをまだ誰からも聞いてない。 何気なく振り返ったその時、銀髪の小さな子供がスクアーロの腕の中に倒れ込み、「シルヴィア!」と叫ぶ声が聞こえてきた。 [mokuji] [しおりを挟む] TOP |