素直な言葉



「泳がねーらんぬみ?」


木陰で海を眺めていた俺の顔を、横から覗きこんできたのは茶色の髪を同じくらいに綺麗に焼けている甲斐裕次郎。
ひょんなことをきっかけに知り合った彼に誘われて、人生初の沖縄に来たのは良いのだけど…これが予想以上に暑い。どれだけ暑いかって言うと動くのも嫌になるくらいだ。
そんな俺とは対照的に、裕次郎と同じテニス部だという面々は楽しそうに海に潜ったり遊んだりしている。


「熱すぎるから此処で休んでたいの。」
「ちゅらんかい入ればいいーさー。」


まぁごもっとも。海に入れば少しは涼しくなるんだろうけどさ、裕次郎を見ていると…海に入ったらこうまで焼けるんじゃないかと心配になってしまって。いや一気に此処までは行かないにしろ焼ける、此処にいる時点で焼けそうなのに…。

いや美白にこだわりなんかないよ。むしろどうでも良い。ただ焼けた後のひりひりが嫌なだけ。パタパタとTシャツの襟首をひらめかせても汗は一向に引かないし。


「脱いやっさーらみ?」


ソレを見ていた裕次郎は俺のTシャツをグイッと引っ張ってきて、どうにも脱げばいいじゃん的な事を言ってきているらしい。
俺以外は全員水着オンリーだしね…あ、裕次郎は帽子かぶってるけど。でもソレは海で遊ぶがために水着な訳で俺は遊ばないしね…はぁ、暑いってこうも人を無気力にさせるんだな…。

あと、俺が皆と遊ぶのを敬遠している理由がもう1つあったりする。


「脱がない。」
「ぬーんちみ?」
「周りと比べて白くて目立つから。」


俺は元々白いのだ。周りは全員沖縄育ち、綺麗にこんがり焼かれている。その中に俺が混ざったらそりゃもう目立つ。実は白いのはコンプレックスなんだよ。
首を傾げながらまだ俺のTシャツの裾を引っ張る裕次郎は、まったくもって理解できていないようで。暑いから脱ぐのは当たり前、と言う様に俺を見てくる。俺の中ではソレは当たり前じゃないから。


「あしびんかい来ちゃんやくとぅあしばなぜ。」
「もー裕次郎遊んどいでよ。」
「慎、しーるぬ気んかいさんけーよ。」


ぶーぶーと文句を言いながら諦めない裕次郎、そりゃ前々から遊びにこいと熱心に何回も誘われていて、今回やっとソレが叶ったわけだ。裕次郎としてはせっかく会えたんだから一緒に遊びたいよな。
分かるんだけどさ、俺のこの暑さに困っている感じも理解してくれ。今度は裕次郎が俺の住んでいる所まで遊びに来てほしいよ。

でも、よくよく考えたら。
いつまた沖縄に遊びにこれるかなんて分からないしな…今回だって裕次郎が誘ってくれなかったら来なかったと思うし。今、遊ばずしていつ遊ぶんだってか?そんなに滞在期間も長いわけじゃないし。


「…分かったよ。」
「まぢなぁ!?」


負けましたよ。そうお手上げのポーズで言えば大きな声出して喜ぶ裕次郎。そんなに一緒に遊びたかったのか?何て言うか一途と言うか単純と言うか…まぁどちらにしろこんなことで喜んでくれるのなら俺としても良かったよ。

Tシャツを脱ごうと裕次郎の手を離させて、覚悟を決めて脱いだ、もうコレでもかってくらい焼いてしまおうかとも思う。
一応下は水着だしな、と立ち上がってTシャツを木の根元に置いて、そこでやっと気付いた。


「…裕次郎?」


俺をジッと見る裕次郎のいつもより大きく開かれている瞳。
なんでだ?と自分の体を見れば、沖縄の海に似合わない真っ白な自分の体。そして裕次郎含め他の面々の健康的かつ海に良く似合う肌の色。あぁ、こんな白いと思わなかったのだろうか。
顔とか腕はまぁ少しくらいは焼けているけれど、胴体はまさに白。今年、まだ一回も海にもプールにも行ってないから焼けてないんだよ。

しばし待っても裕次郎は動く気配がないもんだから、帽子のつばを反対側に向けてやればやっっと「ぬー!?」と声を出した。


「ほら遊ぶんだろ?」
「慎、うひぐゎー待っのみぐさぁー!!」
「え?」


立っている俺の足に縋りついてきた、と驚けば裕次郎はそのまま押してきた。
何をしてくれているのだ、と思いながら裕次郎に押されるままに俺は倒れ込んだ、砂浜って優しいな痛くない…ってそうじゃない。


「…裕次郎。」
「わっさいびーん…。」
「なんだよもう。」
「やしが…」


あ?と若干不機嫌気味に返せば、裕次郎はヤバいという顔で意を決し大声で叫んだ。俺を押し倒した訳を。


「やしが、肌しーるからエロいんやっさー!!」


沖縄語に詳しくない俺でもわかる言葉だった。




素直な言葉




「アホか!!」
「慎ー、くまであしばなー…。」
「顔を赤くするな離れろ!!」


「…永四朗、甲斐がしべぇーてぃっいるぞ。」
「甲斐君…面倒くさいですね。」


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前回の甲斐君の時にも思ったけど、
方言むずい。

全部翻訳サイト様使ってます…。

だれか教えてください…。

いちおう、次のページに
沖縄弁の翻訳する前の言葉置いときます。

2013,06,14

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