Smile Friend



「菊丸ビームッ!!」
「あぶなっ!!」


俺目掛けて打たれたボールをダッシュで避けること何度目なのか、数えるのやめたのは結構前の事。何が楽しくて友達に必殺ビームされて追いかけっこさせられているのか謎。
かなりの時間を練習につぎ込んでいる菊丸もそうなんだけど、ただコートに突っ立って飾りでラケットを持つだけの簡単な仕事を引き受けたはずの俺も、追いかけっこのせいでぜぇぜぇと息を切らしている。


「てめ、菊丸…っ!!」
「ごめんにゃさーい。」
「それで許されると思うのか!!」


頬っぺたに人差し指を軽く指し首を傾げて笑う菊丸からは謝る気ゼロ。いまだ笑っている辺り、俺よりもまだまだ体力が有り余っているようだ。
昔はスタミナ以前にテニス負けなかったんだけどな、やっぱり現役には勝てないってか。というか現役、卒業した俺を苛めるな、非常にきついぞ足が震えて来たぞ。

まだまだ、とボールを手にした菊丸とは対照的にその場に崩れ落ち座る俺。久々に会ってこんなことする羽目になるなんてな…。
今日はバカみたいに晴れている、その割にはそこまで暑くないし風もそこそこあって最高のスポーツ日和と言った感じ。たまたま会った菊丸に誘われて練習に付き合うことになって…なぜか俺も全力でスポーツすることになっちゃってさ、その名もボール避け追いかけっこ。絶対はやらない。


「んにゃ?慎?」


座った俺に気付いて菊丸がぴょこぴょこと元気に走って寄ってくる。
よっと、としゃがみ込んだ菊丸が用意していたタオルを汗まみれの俺の頭にばふっとかけてくる。そのままわしゃわしゃ、優しいけれど少し雑に俺の汗を拭って行く。
菊丸と言えば、甘えてくるイメージが昔からあった。同い年の大石とか不二とか他の面々、その中でも特に末っ子オーラが出ていた。実際に末っ子なんだけど。
だからこうやって、


「にゃははは、汗すっげー。」
「うるさい。どこぞのバカのせいだ。」


甘えさせてくれるような行動、してくるとは思わなかった。そりゃ青学レギュラーの面々といる時はどうしているかなんて知らないけれど、少なくとも俺の前でこんな行動をするくらいには成長…しているってことだよな?

ふーん、と1人で勝手に納得して嬉しい半面、その過程を見られなかった事が寂しいような。いや友達の成長は素直に喜ばないとな。今度大石に会おう、色んな事を聞いてみようかな。

最後に大きくわっしゃ、と髪を掻き撫でられて。菊丸を見れば、猫が遊んでくれるのね。と瞳を大きくして喜んでいる顔を連想してしまう何とも嬉しそうな笑顔。
だからなのか、それともわしゃわしゃと掻き撫でられられたお返しなのか、


「ありがとさん。」
「にゃー!!??」


バッとタオルを奪い取り俺と同じくらいには汗をかいていた菊丸の頭を、コレでもかとぐしゃぐしゃにしてやる。散々やってくれたなこのやろう、と少しばかりの怒りも込めながら。
じたばたと暴れる菊丸を押してコートに寝転がらせて、抵抗されないように腹の上に跨り更にぐしゃぐしゃと。しかし「にゃはははは!!ギブギブー!!」と笑っている声で言うあたり、もっとしてほしいようで。それならばと今まで以上に力を込めて。

2人して笑いながらこんなアホな事をしたら、流石にお腹が痛くなってきた。ひーひー言いながら菊丸の腹の上から下りて側に座れば、菊丸もひーひー言いながら座りなおす。笑いすぎて呼吸が追いつかないし涙が出てくる、少しでも数秒前の事を思えばもっともっと笑ってしまえるほど。


「も、腹、いてぇ。」
「俺も、いたい。」


バカなことしているな、って思うさ。勿論思う。でも、こんなくだらない事が面白いと、笑いすぎて涙が出てしまう程だと思えるのはきっと菊丸だからだと思う。
なんでも一緒に笑ってくれる、どんな事でも笑わせてくれる。菊丸ってそういう奴なんだ、笑顔と言う言葉から人が生まれるとしたら、菊丸が生まれるだろう。それくらいコイツの側は楽しくて笑いが尽きない。

そんなの言わないけどな、アホだと思われたくないしな。


「あー…面白い。」
「慎といると笑いすぎて困るにゃー。」


言わなくても、同じことを思っているっぽいしな。


「俺も。菊丸といると色々苦しいっつーの。」





Smile Friend




「このあとなんか食いに行く?」
「んーにゃに食べる?俺お金にゃーい。」
「ハンバーガー?」
「奢ってー。」
「アホ。」


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菊丸びーむ(イケメンに限る)

菊丸バズーカー(ただし物理)

初青学メンバーは菊丸でした。
にゃーにゃー言いすぎてますかね?
すいません、うちの猫の鳴き声はうーです。

2013,05,31

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