正真正銘



謙也先輩が俺に相談ある言うて、部活後に嫌々残って嫌々話しを聞く羽目に。
部室にはもう俺と謙也先輩しか居らんし、なんで二人っきりやないといけないんやきしょい。はよ帰りたいわ。でも意外と謙也先輩の顔がマジやから今度ジュース奢ってもらう位で勘弁しといたろって思う。


「で?なんなんすか?」
「…あんな、白石の事やねんけど…」


謙也先輩からの話しは、現実味があまりない癖に納得せざるを得ない内容やった。








「慎、苺牛乳売り切れやったわ…。」
「…で?」
「一応なコーヒー牛乳とか買ってきたんやけど…」
「……ふぅん。」
「ほ、ほんまゴメンな!!」


「「……」」


謙也先輩から相談を受けた次の日。
いつも屋上で俺と謙也先輩と部長、そんで慎先輩とで弁当食うんやけど。あの話聞いた後やと…この二人の事普通には見れんわ。ほんま謙也先輩ジュース二本でええすよ。

『白石がな、なんや慎に入れこんどるから注意したったらなんて言ったと思う?…俺は慎の犬やからええんや!!って…』

いや、犬ですわこれは。
よくよく思いだせばいつも慎先輩のためにってジュースもそうやけど色々やっとるわこの人。たまに弁当作ってきとるしお菓子も作ってきとるし、なんやったかこの前はジャージが汚れとるからって洗ってきただのきしょいわって思っとったけど…この人、ガチや。
普通に話ししとる時も、たまに命令するみたいなとこあったわ。「蔵、黙れ。」とかとは訳ちゃうねん、「蔵」って呼ぶだけで黙るねん。


「ま、今日はコレでいいや。」
「お、おおきに。」
「苺が良かったんだけど…役に立たないな。」


ぼそっと呟いた慎先輩の言葉に、いつもなら笑って終わるんやけど昨日の今日やから笑えんわ。
ちらっと部長見たら慌てるどころか若干やけど頬赤いし。きしょいきしょい、絶対おかしいやろその反応。今の何処にその反応する要素あんねん。見なかったら良かったわ…。

いつもより静かになってまう俺と謙也先輩やから、慎先輩は首を傾げながら怪訝な顔をして弁当を床に置いた。


「謙也と光、腹でも痛いのか?」
「え、いや…」


ちゃうねん、あんたらの関係がおかしいんやないかって気付いただけや…。誤魔化すのもそこそこに軽い笑いを返す謙也先輩に溜め息が零れた。
あぁもう聞いてまうのが一番の解決策やろ、謙也先輩を見て聞いてください、と視線で言えばぶんぶんと横に振られる首。このヘタレ、ほんま役に立たんわ。慎先輩に罵られてまえ。

しゃあないから俺も弁当を置いて慎先輩を真っ直ぐ見て、口を開いた。


「聞きたいんすけど。」
「なに?」
「……謙也先輩から聞いたんすけど、部長が自分の事、慎先輩の犬やー…的なこと言っとったって。」


言いにくい事を出来るだけ詰まらないように言いきれば、その場に流れる空気の重い事。
謙也先輩が「よお言いきった」と賛美の視線を送ってくるんやけど、部長からはなんやあかん視線送られとるし。慎先輩はと言えば…何の事をと言いたげに何度も瞳をパチパチ瞬かせる。ほんまそないな話しなかったら可愛え顔しとるのに…。

そんな俺の可愛え発言をしている最中やのに、慎先輩はクルッと部長の方へ顔を向けて。
その顔は、見たことない笑顔やった。


「蔵?」
「お、おん…」
「そんなに一から躾けられたいの?」


聞いたことない低い声に鳥肌がぞわわと全身を駆け巡る。すくっと立ち上がった慎先輩の行き先は、そう1つ。部長の元。
引きつった笑顔の癖に…なんやろ、そう何処か期待しとるような顔をしながら部長は慎先輩だけ見とって。

確信せざるを得ないわ…絶対に、絶対に犬や。


「この駄犬。」


言うなり慎先輩は、部長の腹にひざ蹴りを華麗に決めた。





正真正銘





「あーぁ、新しい犬でも探そうかな…」
「…光、どないしよ…。」
「部長はええとして…慎先輩、犬やったら謙也先輩がええんとちゃいます?」
「おまっ!?」

「あ、あかん!!慎の犬は俺だけやぞ!!」
「蔵?」
「……ぅ、」

((可哀想やな…。))

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謙也も犬になればいいと(ry
一応、[!!]の中にある「俺だけのわんこ」と
同じ世界観です。


2013,05,16

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