心地よい腕の中で




面倒やんなぁ…。

休みやってのにこうもテニスの練習ばっかやと、やる気も失せるで?そら気持ちはわかるわ。試合やるんやったら負けたないわ、勝ちたいやん。せやけど、なぁ?


「慎が遊びに来とる日くらいええんとちゃうの?」


跡部も頑固や。全国行って四天宝寺ボッコボコにしたいんやろな。俺も謙也との勝負したいで。でも慎がわざわざ連休使うて遊びに来てんねんで?遊んでやらな可哀想やん。
遊べんと練習やからジローも岳人もやる気なくしとったし。そんで当の慎もその辺散歩する言うて帰ってこうへんし。
そんで跡部の奴、何を言い出すのかと思ったら「探してこい」?ほんま勝手やわ。影で日吉が笑っとったで?

心当たりなんかあらへんよ?校舎の中にも入れへんやろうし…校庭眺めてもしゃあないやろうし…くそ熱い中をブラブラ歩きまわっても見つからんわ。


「こんなんやったら携帯使うべきやったな…。」


ええサボりにはなるけど、慎がおらんと意味ないしなぁ。
どっか他に時間つぶせそうな所あったかいな…と、歩きまわることかれこれ10分やで。あかんわ、部室戻って携帯に頼ったろ。
足を部室へと向けながらその辺を見渡せども、会いたい奴はおらんし。呆れて帰ってもうたってオチ、あるんとちゃう?
せやったらこの10分何のために費やしたと…ええわ、まだこの辺に居るって信じて…………


「信じてみるもんやな…。」


一応芝生地帯やからって立ち入り禁止になっとるんやけど。
それはそれは強い日差しの今日にはピッタリのポイントやんなぁ、大きな葉桜の枝葉が日陰を作ってくれとってええ昼寝ポイントやな。日陰で体を丸めながら寝とる慎を見て思い出す、そこジローの昼寝ポイントや。
一年の頃、2人は良く部活活動時間になっても来んかった、宍戸と2人を探し回ってまさにその場所で2人を見つけた。今みたいに丸まって寝むっとる姿でな。


「懐かしいやん。」


立ち入り禁止の札も低い柵も越えて、出来るだけ静かに近づいた。昔ならそりゃ大声で名前呼びながら近づいて起こしたもんや。言い訳も覚えとる、「ちゃんとジローを連れて行こうと思ったんだけど此処で寝始めちゃって、俺もつられて寝ちゃった」…ほんま懐かしいわ。

ザァっと少し強めの風が木の葉を揺らす、起きてまうやろ静かにせぇやなんて言うても無駄なんやけど思わず唇に人差し指を当てとった。
それから眠る慎のすぐ横に腰をおろして、汗ばんどる額にはりついた前髪をソッと撫でてやる。可愛えなぁ、1年の時から寝顔変わっとらんな。ほんま大阪行ってしもうて寂しいで?

「ん…」と小さく声を出しながら瞼を震わせたから、俺も真似して木の下に寝転がる。同じ目線やんなぁ、同じってええな。
徐々に持ちあがるその瞼の奥に隠れとった瞳に俺の顔が写ったら、前髪を払っとった手を頬へ持ってく。


「…ゆうし…」
「おはようさん。やっぱ暇やったんな。」
「終わったの?」


まだまだ終わらんわ。
そう言いながら頬を撫でれば、またゆっくり閉じられる瞳。もうひと眠りするんやろうな、まぁ夕方…そうやなくとももう1、2時間は終わらんしな寝とっても問題ないわ。

ま、問題があるとすれば。

俺も眠たなってきたことくらいやな。
欠伸を一つ零してもうた、ら、慎の瞼がまた上がって…小さく笑う。


「此処は相変わらず良い場所だな。」
「そうやなぁ…。」


嬉しそうに笑う慎は俺の頬を撫でる手を掴んで離れさせて、少し上体を起こした。起きるんかいな、と心の中で突っ込んどるとズリっと体を俺の方へ近づけた。
さっきまでもう1人くらいなら寝れる距離があったのに、今はそう間なんかあらへん。密着って言葉がぴったりやな。なんや珍しく慎から近づいてきた思っとったら、その距離のまま寝転がって勝手に俺の腕を引っ張って何も言わんで枕にしよった。
いきなりそないな可愛え事されても困るで?眠気が少し吹っ飛んでまう。でも楽しそうに笑いながら腕枕をする慎を見てると、何も言えへん。
まぁ何も言わんのはアレやし、一言くらい返しとかな…。


「なんやねん、枕にすんなや。俺の腕枕は高いで?」
「いいじゃん。高いの?」
「そらキスの1つや2つ…」
「アホ。」


言いながら逃げられんように腕を背中に回して、笑いは止まらんけど何も言わんで瞳を閉じた。慎も寝るやろうし、このまま寝てしまおう。跡部に怒られてもしゃあないけど、ほんまに此処におったら眠たくなんねん。
風が心地ええ、日差しも丁度ええ、これ以上ない昼寝ポイントにうとうとと眠りの世界へ船をこぎ出した。このまま、夢の中まで一緒やったら幸せやんなぁ…


「お休み、侑士」


眠りの世界へ行く曖昧な意識の中。
耳に届いた穏やかな声は慎の声やって分かったんやけど。

唇に触れた優しい温もりは、何やろう?






心地よい腕の中で






「あはは、ゴメンね樺地。」
「…ウス。」
「侑士、跡部が怒ってるってー。ゆーしー?」
「ウス…。」
「担いでくの?すげーな樺地。」

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ジローちゃんマジ天使。
あ、ちょっとしか出てないですね。
侑士の練習です…はい。
謙也や白石よりも
柔らかい関西弁のイメージです
が、上手く行ったか分からない。

2013,04,26

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