軽くない罪に罰を




罪とは、してはいけない行い。悪い行いに対する責任・刑罰そして思いやりがない事。
罰とは、罪や過ちに対するこらしめの事。

言葉にすると軽すぎやろ。この説明自体が罪やろ。調べて損したわ、って思う事は罪に値するっちゅう話しやな、思いやりあらんし。こういうもんやでって調べた人を褒めなあかんところやな、お疲れさん。

ほなこの状況は罪になってもうて俺は罰を受けなあかんの?

着崩れた慎先輩の制服とか俺が殴ったせいでついてもうた頬の痣とか口の中切ったんやろな零れ出た赤い血とか瞳いっぱいで零れ落ちそうな涙とか倒れてもうた机や椅子とか、理不尽にキレてもうた俺とか。

『光は良い子だね、本当に恋人が羨ましいよ。』

アホか。
アンタ以外望んだ事あらへんのに、せやのになんやねんそんな軽くて深く傷付けてきた言葉。思わず手が拳をつくって振りあげてもうた。辿り着いたのは慎先輩の柔らかい頬やった。
倒れ込んだ先輩の襟首つかんで放り投げたわ、ガタガタと倒れていく机がうっさすぎて蹴り飛ばしたわ。ほんまアホやと思うた。

俺が。


(ちゃうやろ…っ!)


ちゃうねん。分かっとります。そんなん俺を傷つける言葉やないって、褒めとるって分かっとります。せやけど俺、俺…初めて会った時から好いてんねん。ほんま先輩の言葉が大事でしゃあない。
そのままの意味で受けとってまうねん、恋人が羨ましいって、今まさに俺に恋人おってソイツが幸せやろうから羨ましいっちゅう意味で受けとってまうねん。

おらんのに、欲しないのに、慎先輩しか、俺は。


「ッ…て…、」
「あ…。」


放り投げてもうた先輩が起き上がって手の甲で口の端を拭う。赤に染まってまうその手が、無性に俺の心を揺さぶる。これが罪に対する罪悪感なんかなって言葉が浮かんで、次に無性に怖なった。
罪には罰を、俺に降る罰なんか分かっとんねん。
もう二度と話せなくなるねんな、もう二度とコッチ見てくれなくなるねんな、もう二度と名前を呼べへんなって。思いつくわ嫌でも怖いくらい泣きたなるくらい幾らでも思いつくわ。

ガクリ、と急に膝の力が抜けて座りこんだ。震えとるって分かったのは膝に床に触れた手を見て。床を見る視界が水の中で瞳を開いた時みたいにぼやけとる。
バカな奴やな、自分で自分を罵っとった。
唇すらも震えとる、そう、それくらいやねん。


「…ほんま、は、」


声が上ずる。
頬も伝わんで床へ直接落ちてく涙。


「慎先輩、が」


耳をふさがれとったら、どないしよ。


「ほん、ま、に、すき、」


このまま死んでしまいたい。
塵も残さんで透明になったろか、輪郭もあらへん、ほんまの透明に。
そんで慎先輩を包みこんでしまいたい。


「…すき…」


この罪にふさわしい罰を、俺にください。





軽くない罪に罰を





両膝を両手をついたままの俺の首に回る腕の力は、優しくて逆に怖かった。
そのまま首を絞めて殺されても本望やって思った。

嘘や、あらへん。


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[!!]に入れるにはあっさりしているような
でも此処に置くのもなんかなーって思っていたり。

てか、オチも山もないんですが、いいのでしょうか。

2013,04,19

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