東西ルーキーズと手袋とXmas



「大阪の方が綺麗やなぁ!東京のイルミネーション静かや!!」
「…派手なだけなんじゃないの?」


辺りを一望できる高台、手すりから出来るだけ身を乗り出しイルミネーションを見る金ちゃん。そんな金ちゃんが落ちないようにコートを握る俺。そして俺のマフラーの端を掴むリョーマ。万が一事故が起きても何とか…なるのかな、これで。

イルミネーションが見てみたい。
そう言いだしたのは金ちゃんだった、クリスマスの夜は一番イルミネーションが似合うシチュエーションとも言えよう。東京に遊びに来た金ちゃんが行こう行こうと騒ぎ立てたので、俺は道連れにリョーマを呼んだ。すごく嫌な顔されたけれどついてくるあたり良い子だ。


「白と青ばっかやん!大阪は金色とかいっぱいやで!」
「目立てばいいってもんじゃないんだけど。」


別に東京のイルミネーションに思い入れがあるわけではないリョーマがマフラーを口元まで上げながら騒ぐ金ちゃんを冷たい目で見ながらもっともなことを言う。
…大阪って確かに賑やかで眩しそうなイメージある…けれどそれはそれで良さそう。今度は俺たちが押しかけるって言うのもありか。

身を乗り出していた金ちゃんがちゃんと両足の裏を地面に着地させたのを確認してから、コートから手を離してやる。白石にイルミネーションを身に行くと電話したら謝られたのも頷いてしまうほど、このゴンタクレはさっきからこの調子だ。
だからと言ってリョーマもリョーマでさっきから寒いからかご機嫌斜めのご様子、言う事が基本的に冷たい。こちらも手塚から何かあったら電話するようにと言われたのが頷ける。


「金ちゃんもリョーマも満足した?」
「おん!やっぱ大阪がいっちゃん派手なんやな!!」
「俺は別に来たいなんて言ってないっすけど。」
「はは…じゃあ俺の家行ってケーキでも食べようか。」


元気いっぱいな金ちゃんが俺の左腕に抱き着いて来ながら「ケーキ!」と叫ぶ、途端周りの通行人や俺たちと同じくイルミネーションを見ていた人たちからクスクス笑い声が聞こえてきて、金ちゃんには悪いけれど恥ずかしい。

でも純粋に楽しんでくれているようなので悪い気はしない、せっかく遊びに来てくれたんだから楽しんでもらわないと嫌じゃん。それはリョーマも、なんだけどね。
寒い中呼び出して悪いとは思ったよ、機嫌良い言葉なんか一つも言わないあたり嫌なのかもと感じるけれどまんざらでもないって俺は気付いている。さっきも携帯のカメラで写真撮ってたし。

微笑ましい年下二人に思考を緩ませていた俺の空いている右手に、ふわふわした物が触れた。まさか雪?とびっくりして見ればリョーマの手袋をしている手が寒さでかじかんできた俺の手を撫でていた。毛糸の手袋は触れるだけで暖かい、リョーマの体温を手袋越しに感じていると大きな瞳に見上げられる。


「慎先輩、手袋してないんすか?」
「手袋、家に忘れたんだ。」


こんな寒空の下にでる、と言うときに限って大事なものを忘れてしまった間抜けな俺。…いや、金ちゃんとリョーマの防寒ばっかり心配していたせいなんだけど。
大丈夫と笑ってみせようとしたら、左から「手袋わすれてもうたん?」とこちらもまた大きな瞳。金ちゃんが腕に巻きつけていた手を俺の手袋をつけていない左手に移動させた。
今の今まで気づいていなかった金ちゃんが、これまた人の目を引くほど大きな声で「ほんまや!」と叫んだ。


「あかーん!手袋せぇへんかったら手が落ちてまうって白石が言っとった!」
「なにそれ怖っ。」
「嫌やー!慎の手ぇ無くなってもうたらテニス出来なくなってまうー!」


毒手を持っている(自称)白石らしい怖すぎる嘘のせいで体温下がってしまいそうなんですけれど。
金ちゃんが一生懸命俺の手を手袋つけている両手で覆って摩りだす、ごしごし、それが昔動物園で見たアライグマが食べ物を洗う仕草そっくりでつい笑ってしまう。けれど本人はいたって真面目、俺のために暖まれと頑張っている。
慕われているな、なんて嬉しくなりながら金ちゃんを見ていれば…右手にも、ごしごし、アライグマの気配。


「…リョーマ。」
「テニス出来なくなるのは困るし。」


今日、初めてニヤッと笑って見せてくれたリョーマも珍しく金ちゃんと同じ考えらしい。俺の右手を優しく摩りだした。
どこまでテニスが好きなんだよ…と呆れてしまうが、嬉しいという気持ちの方が上だ。可愛いルーキー二人を両手につい緩む顔。あぁクリスマスっていいものだな。
暖かい家に帰ったら美味しいケーキがあって、ほかほかのお風呂があって、ふかふかのベッドがある。そして俺から二人へのプレゼントもある、喜んでくれるかは分からないけれどきっと笑ってくれる。

手を摩ってもらったまま、俺は二人を引きつれ歩きだす。行き先は一つしかない。
イルミネーションは雲一つない寒空の下で一番輝く、お蔭で良いものは見れたし暖かいものを手にしたよ。


「よーし、家に帰ってケーキだケーキ。」
「コシマエ、どっちが多くケーキ食べれるか勝負やな!」
「不毛な勝負はしたくないんだけど。」


サンタさんって今どのへんでプレゼント配っているのかな、俺はもう最高のプレゼント貰ったから良いんだけどさ。




両手に手袋
(温もりと優しさ付き)




クリスマスは誰にだってキラキラしたものが降り注ぐ、雪も奇跡もプレゼントも…


「コシマエがサンタさん食べよった!!ずるいでぇ!!」
「そっちこそイチゴ食べたじゃん。」
「二人とも口の端にクリームついてるよ。」


流れ星もイルミネーションも笑顔も。

二人の口の端についているクリームを取ってあげれば、今日一番の笑顔。最後には仲良くなってくれるなら多少喧嘩したっていいさ、その方がお互いのことを本気で知れるのだから。


「コシマエぇ!明日ワイとテニスしてな!」
「…いいけど、絶対勝つよ。」


でも次からは保護者を増やそうと思う、特に明日。手塚に電話しよう…そうしよう。


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初めての
ルーキー二人ハーレムでした(笑)

夜桜様
ちゃんと男主は
お兄ちゃんしているでしょうか、
ちょっと抜けた感じになっていませんかね?
もしも直してほしいところありましたら
申してください、喜んで直しますので!

リクエスト
本当にありがとうございました!

2014,12,18


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