隠しごとの綺麗なこと



知らなくていい事は何一つない、ソレが君を形作るものならなおさら。


「なんだ、千石って本当に頑張り屋だったのか。」
「うわぁ!!??」


何時だって女の子を追いかけて、何時だってラッキーで済ませて、何時だって掴みどころのない態度を取る千石が居残り練習ねぇ…。

山吹中のテニスコートで放課後も放課後…19時を回りました今ですが、テニスウェアで汗だらけの千石を見つけました。
かねてから室町からは「千石さんは努力家ですよ、アレでも」と聞いていたからなんとなく知っていたけれど、実際に目撃すると感動した。

夕暮れも消えかかって星が見えてきた時間に、まさか声を掛けられるなんて思わなかった千石が俺の方を向けば「お化けじゃなかった…ラッキー」と呟きながら袖で額の汗を拭う。


「なーんだ…見られちゃった?」
「うん。」
「秘密の練習だったのに…エッチ。」


アホな事を言いながら足元に散らばるボールを片付け始める千石の背中が、少しだけ気まずいと訴えてくる。本当の本当に秘密の練習だったんだろうな、誰にも見せない誰にも言わない…そんな秘密。

ラッキーだけがすべてじゃない、千石って男は実力もあるし動体視力もある。周りと比べると小さめな体を補う技術もある。今の千石を作り上げたのは、まぎれもなくこの秘密の練習なんだろう。


(格好つけちゃって…)


女の子が大好きで、可愛い子は放っておけない馬鹿だからそのギャップにドキドキしてしまう俺が此処にいるのに。

俺はこの地球上の日本と言う小さな大陸に住む千石のたくさんの友達の一人。
それってあまりにも悲しすぎる、千石の頑張っている姿を見て惚れてしまいそうだから。


「なー、千石。」
「なに?」
「手伝ってやるよ。」


え、と千石が振り返って歩み寄ってテニスコートに散らばるボールを1つ2つと広い上げる俺を見る。
呆けるその顔を目にしてしまった俺は笑って千石へボールを投げてしまう、こういう所があるから頑張っているお前が好きだって実感してきた。もう止まれない気がする。

知らなくていい事なんかない。


「さっさと拾えよ、そんでどっか寄って帰ろうぜ。」
「お、いいね。どこ寄る?可愛いウェイトレスさんが働いているファミレスでいい?」


千石の全てを知りたい。
笑いながら俺が投げたボールを拾い上げカゴへ入れる千石を、もっと見ていたい。
だから散らばっているボールを早く片付けてどこへでも行こう。千石が行きたい所ならどこへでも。

全てを片付け終え、千石の着替えを待っている間、見上げた空はもう真っ暗で月が綺麗に輝き始めていた。
この景色を千石と共有できる…そんなささやかな幸せに頬が熱くなるのを感じた。




隠しごとの綺麗なこと




「おまたせ、じゃ行こっか!」
「なに食べようかな、腹減ったー。」
「手伝ってくれたお礼に奢るよ。」
「マジか、さすが千石格好良いー。」

(今日の占いにあった運命の人って…やっぱ…)
「ん?」
「…へへっ、何でもないよ。」


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お互いがお互いに惹かれあう。
カノン星人格好良いよね。

9月の拍手のために書いたけど、
なんかしっくりこないのでコッチに。

2013,08,21


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