狩りしましょ 4



「頼まれとったの出来たで。」
「おーありがとユウジー。」


緑の髪の上に付けたヘッドバンドが特徴のユウジが、今日は作業着にしている黒のツナギ姿でやってきた。背負っていた大きな革の袋をカウンターに置けば、中に入っているものがボフ、と1つ大きな音をたてた。
俺が武器屋なら、ユウジは防具屋と言った所だ。ウチでは作れない防具やアクセサリーを作っている。オーダーメイドも受け付けているからユクモ村以外のハンターにもファンがいるほどの腕前なのだが。


「ほんまお前やなかったらこんなん引きうけへんで。ったく…高いで?」
「あははは…覚悟はできてます…。」


口が悪いというか、結構仲がいいはずの俺でもこの言われようだ。なんというか腕は認めるのだけれど、ソレが苦手だという人がかなりいるらしい。慣れれば平気だし、口では高いとか言うけれど友人価格にはしてくれるし…本当はとてもいい奴なんだけどな。

今だって。革の袋を開いて中に入っていた鎧やレギンスを確認する俺をジッと見てくるその瞳は「職人の瞳」なのだ。作ったモノが約束と違えば一から作り直すしお金も安くする。


「流石ユウジ、めっちゃカッコいいじゃん。」
「…あ、当たり前やろ、馬鹿にすんな死なすど!」
「本当ありがとうな。」
「……………お、おん。」


中に入っていたウルクススの素材で作られる装備達を眺めながら言えば、照れくさそうなユウジの返事。いい奴なんだよ、コイツ。あの変態蔵ノ介の装備だってコイツが作っているしな…凄くもったいないと思う。

ウルクススの装備は全て年中雪が降っている凍土でも使える暖かい装備、鎧と言うよりは防寒具と言った方が似合いそうだ。色合いは白をベースに赤や青の色がちりばめられている可愛らしいもの、至る所にウルクススの短い尻尾を連想させるモフモフしたボールがついている。


「しかし…なんでウルクスス装備やねん、お前やったら他の装備でええやん。」
「今度、凍土行かなきゃいけないから。」


暑いのも嫌いだけど寒いのも嫌いなんだよ。それでも納得していないようなユウジがヘッドバンド越しに俺を見てくる。この間のベリオロスの装備だと寒いんだよ…さりげなく肌が出ているから。
ユウジ、鎧とかの方が作るの好きだからなー…こういう服みたいな装備だったから不満なのかもな。

クルッと俺に背を向けたユウジは首をさすりながら、呆れているとでも言いたげに大きなため息を零し俺に視線だけ向けた。首をさするその腕は防具を作っているだけあって筋肉がちゃんとついている。
そういや、ユウジって昔は狩りしていたんだよな…。その頃から筋肉はついていたのかもしれない、昔はたまに蔵や謙也とかと狩りに行っていたのに。俺の事をみんなもったいないというけれど、ソレはユウジもなんじゃないかな。


「ユウジ、な一緒に狩りにいかない?」
「は?」


昔は大剣を振りまわしていたユウジに、俺は自分でも無意識に声を出していた。









「なんやねん。ユウジ、俺が誘っても戻ってこんかったくせに、慎に誘われたら戻ってくるんかいな。」
「じゃあかましいわっ!!ちゃうわ、コイツしつこいねん!せやから一回だけやって…」


さっそく顔を合わせるなりユウジをからかう蔵に苦笑いしてしまうが、ユウジが此処へ来てくれて良かったと一安心。
本当、結構無理に誘ったし。クリーム色が緑の髪色を引き立てる城塞遊撃隊シリーズの装備を着こんだユウジの背には、身の丈ほどある大きな剣。俺では持てないだろう大きさのソレを、ユウジは時によって片手で持ちモンスターへ振りおろす。

いまだギャーギャー騒ぐユウジをからかう蔵をよそに、俺と謙也は本当に久々だと密かに笑う。


「よう誘ったな。」
「だろ。」
「…アイツ、最近は村から出ぇへんかったしええんとちゃう?」


たくさんの物を見つける喜びをユウジは知っている。モンスターを倒し村を守る大切さをユウジは知っている。仲間と共に世界を見る楽しさをユウジは知っている。

それを忘れたフリしてハンターたちのために鎧を拵えるのはどんな思いだったのだろう。
俺が頼んで作った防具を渡し、それを見る俺を見るユウジの瞳は確かに「職人の瞳」だけれども…もう1つ意味がこもっていることを俺は知っている。

『羨ましい』


「…ねー、もう行こうよ。」
「せやな、お前らいつまで遊んどるっちゅー話しや。」


真新しいウルクスス装備を身にまとっている俺が、ユウジと相も変わらず変態装備の蔵へ声をかける。今にも大剣を抜こうとしてたユウジの隣に並ぶ。
今日はただのハンターなんだし狩るのはモンスターだけにして、と抑え四人がちゃんと準備万全な状態になった所で村の外へ一歩踏み出した。一番先頭に謙也が、二番目に蔵が、三番目に俺が続けば最後にユウジが。
一歩感覚で空いているスペースを詰めるでもなく歩いていけば、俺の背後から足音が止まった。
振り返ればユウジはジッと俺達を見ていた、瞳をキョロキョロとせわしなく動かしながら何か言いたげに。


「ユウジ?」


なにか忘れ物か?と近づけば違うと首を横に振られた。2人が先に行ってしまうかも、と進行方向を見れば気付いた2人もこちらへ引き返してくれていて。
三人に見られてか、ユウジは顔を少し下げ、言いにくそうに何度か唇を開いては閉じる。何度かソレを繰り返した後、バッと勢いよく顔を上げ声を振り絞った。


「…おおきに。」


狩りへ行ける喜びは、狩りをして生き延び仲間と帰ってこれた嬉しさを分かち合えたものだけが分かる物なのだろう。ユウジはそれを知って我慢し続けた、本当は俺達の様に自由に狩りへ行きたかったのだろうけど、ユウジにはユウジにしか出来ない事が出来てしまったから。

険しい顔をしているのに頬を少し赤く染めながらいうユウジの小さな呟きに、三人で笑って返した。



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ゆーじーUG−
今、書きたくてしょうがない人TOP3

・ユウジ・千歳・仁王

私にとって難しくて死にたくなる三人です。

2013,07,18


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