暴走ゆうじ



「あ、ノート無くなりそう。」
「アホやな…絶対昨日からしっとったやろうが。」


なんてことない独り言になのに、後ろの席に座るユウジにたかが数学のノートの残り数ページになっただけなのになんで「アホ」って言われなきゃならないのだろうか。
ムカっときてくるぅり後ろを振り返れば、頬杖つきながらまさに馬鹿にしていますという表情で俺を見てきていたので、イライラして思わずユウジのヘアバンダナ引っ張った。
というか、その言い回し。俺の母親に似ているんだよ。


「な、なにすんねん死なすど!!」
「五月蠅いんだお前は…なに母親みたいなこと言ってんだよ…っ!!」


ヘアバンドを掴みびよんと伸ばせば、ユウジもとられまいと必死に腕を掴んで抵抗してくる。これが噂の芸人さんがやっている口にゴム紐咥えて…ってやつか!!

とかアホな事思っていれば、ユウジはあっさり逃げ出しては俺を睨みかえして、ふむ、と俺を見た。


「母親…」
「そうだよ、俺の母親もそういうこと言ってくるんだよ。」
「母親…今回はそれでいきましょ。」
「え。」


今回ってなんだというか母親でってなに、とかツッコミしたいけど何処からはいればいいのか分からない東京育ちはユウジの言葉にただ、なに言っているんだコイツは…という視線を投げかければ、ユウジの瞳の色がなんか変わった。色って言うか俺を見てくる視線の温度とでもいおうか、なんか変えてきた。

いったいなんなのだ、どこから突っ込めばいいのだろうかと小春を呼ぼうと辺りを見渡せば、ユウジは女らしく口元に指先を添えては俺にキッと鋭い視線を投げかけてきた。


「アンタはいつもそうやってギリギリまで何も言わんで、困るんはアンタでしょ!」
「えええぇぇぇぇ何この人怖い」
「この人って…この子は生みの母親になんちゅう口のききかた!!」


ヤダ怖い。
ダンっと机をたたいたかと思えば、泣いているように目元をぬぐう仕草。モノマネ好きとか得意とかっていうレベル超えた、怖い。
うう…っと泣き声を洩らすユウジをとりあえず置いとくとして、小春を手招きすれば「ユウくんったら」と微笑ましげに見ながらこちらへ来てくれる。


「小春助けて、ユウジ怖い。」
「おかあちゃんやろ?慎、反抗期も対外にせんと…」
「ユウくんおかあちゃんなの?せやったらアタシは慎きゅんのお姉ちゃんやな。」


小春まで!?と驚いて気付く、コイツらグルだった。ダブルスのパートナー以前にコントの相方じゃないか。そりゃ息も合うというかネタを合わせてくるわけだ。

そのまま小春とユウジは「おかあちゃん、泣かんといて」「小春…アンタはええお姉ちゃんやな…」と2人で何処かへ行っているようなので、今のうちに助けてくれそうな人を探す。
とは言っても、もうクラスメイトはこのコントを楽しんでいる言わばお客さんになっているので助けを求めても無駄だろう…どうすればいいのだ、と悩む俺の視界に入ってきたのは、廊下を歩くイケメンオーラだった。


「く、蔵っ!!」
「ん…あれは…」


大声出す俺に釣られて廊下を見るユウジは、後を追って口を開けば、こちらを見た蔵に向かって


「慎、アレはおとうちゃんやろ?」
「えええぇぇぇぇぇぇ!!??どういう家族構成だよっ!!」


最早訳が分からなくなりそうなコントに頭がついていかない、が、ソレはいきなりお父ちゃん役を振られた蔵も同じらしく「え、俺?」と自分を指差しては辺りをきょろきょろ。
小春も「おとうちゃんやなぁ」とユウジとキャッキャッ騒ぎ、2人で蔵へ目掛けて「おとうちゃーん」と手を振る始末。
いやさすがにあの慌てぶりから蔵はのらないだろう、俺は「蔵」ともう一度名前を呼んだ。

どうにもこうにも空気は分からないしコントもどうなっているのか分からないが、関西人の血が流れているだろう蔵はうろたえるのを止めて、右手を口元に当て笑った。


「んー…。」
「く、蔵…。」
「やはり蔵ノ介は、エクスタを捨てられない…。」


チッと舌打ちをする勢いで嘆くユウジには悪いが、俺にとっては救いとなる…


「風呂より先に、ご飯にしよか?」
「く、くらぁぁぁぁぁあっ!?」


第二ボタンをはずしながらそう言う蔵は、まぎれもなく完璧な関西人でした。
このコントはしばらく続いた…俺がキレるまで続いた…。


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半端だけど許して。

平野は天才だと思う。
そしてさとちゃんは天使だと思う。

ミュの日替わりネタから。
本当はそうめんを売る金ちゃんと
それをちゃかすユウジと
二階席に登場した白石でやっているネタです。
平野最強説。

2013,07.12


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