ベール



※六角の悪ガキ設定


「サーエー!!一発芸、定置網漁!」
「はいはい、面白いね。」


放課後です。でも家庭科室です。もっと詳しく言うなら家庭科準備室にいる。

で、何しているかっていうと今日の家庭科クッションつくるって内容だったんだけど。なんか俺だけクッションじゃなくって枕になってたんだよ。
すっげービックリした、だって俺の家にある枕とそっくり!横長なその形、そして使ってみると俺のベスト首角度にピッタリフィットしたんだ!

でも勿論怒られた。なんていうか先生の頭から角生えてた、先生ってば牛だったんだねって言ったら鬼になった。
そんなこんなで居残りで今度こそ正方形のクッションつくってこいって言われちゃった。それでバネに手伝ってって頼もうと思ったらバネのクッションが凄い前衛的だったからサエに頼んだ。先生もサエの方が見張りには持って来いだって。


「サエ、まさに魚の気持ちなんだけど。」
「出られないの?」
「やばい、やぶきそう。」


準備室に布の予備があるからって先生に言われて取りに来たんだけど、なんていうか他にも白い布があった。なんていうか網っぽいって言うか…女子の服についているような白い糸が模様をつくっている布があった。
しかも凄くでかくて…思わず床にひいて潜って一発芸、したんだけど出口わかんね。だって全部似てる、まじ出口どこ?しかも指に絡むこの布。
捲ろうとすれば指の隙間に絡んでくる縫い目、この布の糸密集度低くね?すっかすかじゃね?


「ほら、こっちの裾から出ておいで。」
「うぇーい。」


サエが眉を八の字にしながら、端っこを持ってひらひら捲って出口を教えてくれる。指の隙間に入り込む糸からもいちいち助けてくれる、まじ優しすぎ。そうか…匍匐前進すれば良いんじゃね?まぁ今はサエが出口教えてくれるからいいや。次、網にかかった時はそうしよう。
ひらひら動く出口めがけて匍匐ならぬ膝前進、わんこの気持ちで進んでやっと布の端から顔をだせた。別に息が出来ないってわけじゃなかったけど解放感からプハッて息吐き出した。


「キャッチアンドリリース!」
「おかえり。」
「ただいまー!」


まだ頭に布かぶったままだけど、生還できた喜びで思わずサエに抱きついた。サエ、魚は大変だぞ美味しいぞ。でもサエがいなかったら俺は一生布の中だったかもしれない、本当にありがとう。
「おおげさだな」ってサエがいうけど俺からすれば十死に一生を得たってやつ…あれ、違くね?なんか数字変じゃね?まぁいっか。それくらいの一大事だったんだ。
喜びを分け合いたいのも山々だけど、俺はクッションを作らないといけないしなー。面倒くさいけどサエから離れてキョロキョロ周りを見渡してクッションの布探し。
あれ、準備室にあるって先生言ってたのにさどこにあるか分かんない。あれかな、座ったままだから見えないだけ?物事は色んな角度から見るもんだってオジイが言ってた。
さらに面倒くさいーでもしょうがないか、立ち上がって探してみようかなってしようとした、んだけど、


「ソレ、ウェディングベールみたいだ。」


ってサエが言った。
………うぇーいでぃんぐべーる?へーる?ぺーる?うえいていんぐ?


「何それ?」
「え?知らない?」
「ふいんき美味しそう。」
「残念、食べ物じゃない。あとふいんきじゃなくて、ふんいき、な。」


まだ頭の上に乗っかったままだった白い布の端っこをつまみあげて、取ってくれると思っちゃったけどサエは悪戯っ子だったみたいだ。取るどころか少し深めにかけ直したんだ、やっと出口にたどりついたっていうのにもう一回魚に逆戻りってか?
まぁサエが一緒に居るならもう一回やってもいいけど…で、そのうえいていんぐべーるってなに?思いっきり首を傾げて白い布の端っこつまんでひらひら動かす。てか、ふいんきじゃないの?ふんいきなの?


「それって、どんなやつ?見てみたい。」
「…見てみたい?」
「うん。サエの家にあんの?食べさせて!」


ウニの半生が好きってくらい食べ物にはこだわりあるサエが言うんだ、きっと美味しいんだろうなー。サエの家にあるんなら食べてみたい!隠しておくなんてずるい。
よっぽど美味しいものなんだな、サエってば俺に見せて良いのかどうか考えこんでた。ねぇねぇ、見せてーって何回か言ったらサエがくすくす笑いながら俺の手を取ってくれる、サエの髪と同じ綺麗で整っている手。俺ねこの手大好きだよ、バネのごっつごつしている逞しいって感じの手とは違う感じがするんだ。バネの手も大好きだけどね。
思わず手を握り返して笑ってくれるサエになんだか嬉しくなって俺も笑ってサエの頬に俺の頬を合わせた。すりすりって、よく剣太郎にしている頬合わせ。サエとするの初めて、楽しくなってたくさん頬合わせちゃったら、するっと白い布が頭からずり落ちてしまっていた。でも楽しくて気付かなかった。


「いいよ、見せてあげる。でも何年先になるか分からないけど。」
「え、熟成するの?」
「だから食べ物じゃないってば。」


ウェディングベールという物がどんなものなのか知らない俺に見せてくれるっていうサエの言葉、俺は真っ直ぐ喜んだ。
それにサエがちょっとだけ傷ついたの、気づかなかった。





海辺のウェディングベール





バネにウェディングベールってなに?って聞いたら、花嫁さんが頭に付けているひらひらだって教えてくれた。家に帰ってお母さんに頼んで結婚写真見せてもらった。そしたらウェディングベールって想像していたのと全然ちがった。
白い白いウェディングベール、まるでサエの髪色みたいにきらきらしている。
家庭科準備室にある白い布でたまたま出来上がった偽物よりも、本物は高くて綺麗で眩しい…けれどサエは見せてあげるって言っていた。


「うーぬ…サエの結婚式に呼んでくるって事かな?」


明日もう一回聞いてみよーっと。サエってばいつの間に好きな人出来たの?って。


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白い布は
レースのことです…

分かりにくくてすんまそん


2014,05,23


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