未来の俺と君は



精市と知り合ったのは精市が住んでいる家の隣へ俺と両親が引っ越した日、だからー…5年くらい前になる。
小学生4年?くらいの時にはじめましてをしたわけだけど、その時から精市は何も変わっていない。
一緒に登校するのも下校するのも、休みの日に買い物へ行くのも寝る前に部屋の窓を開けて話すのも…


「おはよう、朝だよ。」
「…近いっ!!」


朝一番の挨拶も。
寝起きドッキリよろしく目覚ましが鳴り起きた俺の視界が全部精市。至近距離なんてもんじゃない、額と額がくっついていたぞ。どうりで息苦しいはずだ。
制服を綺麗に着ている精市の肩を押して起きるのは最早いつものことで済んでしまう悲しい毎日なんだけど…いや、毎日額と額はくっついていないぞ。添い寝だったり馬乗りされていたり…凄い時は何故かプロレス技を掛けられていた。


「精市…目覚まし時計で起きれるってば。」
「フフッ、止めた後2度寝するかもしれないから心配で。」


そーですか、へー。毎日の会話もさておいて、ベッドから抜け出しTシャツを脱いでクローゼットを開く。

精市はおかしいくらい俺のことを気にかけてくる、引っ越して来た日にはもうすでに「ひとりで寝れる?いっしょに寝ようか。」と友達になりたてなのにお泊まり会したくらいだ。
もぞもぞワイシャツのボタンを止める俺の横でネクタイを持って待っている精市に慣れた中学生活も3年目、高校はそのまま立海大なのでまだまだこの光景はなくなりそうにない。


「今日はカーディガン着たほうがいいよ。」
「なんで?」
「風が強くて寒いから。」


ネクタイを持ったまま、勝手にクローゼットの中を漁りカーディガンを探す精市を止めもせずズボンを履き替える。今だたまに風呂場へ連行されて一緒にはいる、なんてことを嫌々している仲なのでお構いなしだ。
ベルトをとめた所で精市がワイシャツの襟をたててネクタイを回す。入学してからずっとこうやって精市がやっているので、俺はいまだネクタイを綺麗に出来た試しがない。


「はい。」
「ん。」


歪みのないネクタイに満足そうに笑った精市は引っ張りだしたカーディガンを着せてくれるしボタンも止めてくれる。
何が楽しくて俺の世話をしているんだろ、とボンヤリ眺めれば完成した俺の秋の制服姿を眺め返され、最後にと精市は俺の背中へ腕をまわし抱きしめだした。
普通なら驚き暴れる所かもしれないが、生憎慣れちゃったんで。


「おーい、遅刻するよー。」
「もう少し。」
「精市ー、お腹すいたー。」


しょうがない、と笑う精市は今日も今日とて幸せそうに俺の手を取り部屋を出る。いや、我がもの顔ですが俺の部屋です。
トントントン…二つ分の足音を聞きながら今日の朝ご飯の匂いに腹が鳴る俺と、そんな俺を嬉しそうに見つめ繋いでいる掌を振る精市。


「精市ってさ、俺の世話して楽しいの?」


あー今日もいつも通りだ。


「うん、お嫁さんのお世話は楽しいよ。」


精市の頭のネジが緩んでいるのも、リビングへ行く前に許可なくキスしてくるのもいつも通りだ、うん。




未来の俺と君は




「精市ー、体育で着替えたらネクタイ崩れたー。」
「しょうがないな、ほら膝の上おいで。」


「アレが言ってた手懐けた成果…だろぃ?」
「プピーナ。」


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幸村さんならこれくらいやりそう。


2013,10,21



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