独占Love





「たまには普通にデートするか。」
「え、」


下校途中、俺はコレでも恋人の蔵に聞いてみた。
いつもはドロドロと濃くて疲れる時間ばっか過ごしているし、たまには普通の恋人らしく普通のデートをと提案すれば蔵の驚いた表情に俺も驚いた。
そこまでアブノーマルな奴なのか?と疑いの眼差しを向ければ「ちゃうねんちゃうねん」と慌てながら否定する。いや蔵はアブノーマルだよ?なにをいまさら…。


「いきなりそんなん言う思うてなくて…」
「そういう気分なんだけど。」
「せ、せやったら買い物行こか?」


思い返せば俺達、付き合い始めたきっかけを思い出すのが面倒なきっかけで此処まで来たわけだけど、なんだかんだでお互い好きあっていると俺は分かっている。
蔵は従順だから分かりやすいけど。たまに俺は引く位だし。
だけど、俺は素直に好きって伝える事が少ないし、この間にいたっては「新しい犬でも…」なんていって蔵を動揺させたほど。動揺って言うか泣かせたんだけど。

たまには、そうたまには。
一年は365日もある、そのすべてをアブノーマルな日にしなくたっていいんだ。たまにはノーマルな…ただ手をつなぐだけとか抱きしめあうとかそういうのがしたくなる。

それが、今日ってだけ。


「蔵はそれでもいいの?」


俺は確かに蔵を泣かせるのも痛めつけるのも好きだけどそういう気分だから平気だけど、蔵はアブノーマルの気分だったんじゃないのだろうか。
それはそれでいいのかもしれないけれど、コッチの我儘につき合わせるのも今日の気分的には癪だ、珍しく俺が一歩引いて尋ねれば俺の前では滅多に出ない爽やかな笑顔が向けられた。


「おん。恋人とのデートに嫌も何もないで。むしろ望んで行くってもんやで。」
「……ふぅん。」


こういう所、たまにある。
妙に慣れているというか天然のタラシっていうか。何が言いたいかって言うと、ありもしない影にイライラするって言いたい。
蔵には俺だけでいいのにな、って言い聞かせたってスッキリ出来ない。あぁ怖いね独占欲ってやつはさ。

だから俺は蔵の右手を引いてキスをする。

堂々と通学路で。住宅街で。隠れもしないで。いっそ誰かに見つけてほしくて。
コイツは俺の。俺はコイツの。体中に残したマークを持ってしても拭いきれない独占欲に呆れるよ。


「…どないしたん?」
「なんとなく。なぁ、普通のデートって何するの?」


普通を知らない俺がアブノーマルを好む蔵と普通のデートなんて、なんだか可笑しくて困っちゃうな。

俺の思いが伝わったなら良いのに。でも蔵はやっぱり笑う、いつもの俺達の時間では見せない笑顔で。まるで、別人みたい。


「せやなぁ…何処がええかな?」


あぁもう!
これ以上、俺を惚れさせないでくれよ。




独占Love




「何処でも良いよ。」
「なんか買い食いしよか。」
「なに食べるの?」
「んー…。」
「…蔵を食べようか?」

「え゛っ。」
「嘘。俺が食べられるんだもんな。」
「え゛っ。」
「これも嘘。」


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普通のドM白石と主。
どんな時も主に振り回されていてほしい。

2013,06,24


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