46.まともなものを下さい



「あ、財前くん発見。」


前にもろた無料券を手に財前の教室へ向かって歩いとれば、廊下にしゃがみこんどる後輩…ってか財前むっちゃ機嫌悪そうやねんけど。
ごっつ目つき悪いねんけど…あの顔、俺は知っとるで。謙也達にからかわれた後の「お前ら後で仕返ししたるからな覚えとけや」って呟いた時のキレとる顔や。
うーわー嫌なときに会ってもうた…慎が嬉しそうに財前に手を振るのは可愛えんやけど、これはやめといた方が得策な気もする。

まぁ慎に呼ばれてコッチに顔を向けた財前が「あ」と低めの声を洩らして、ゆっくり立ち上がって一応頭を下げて来るからもう逃げれんけどな。


「ほんまに来はったんすね。」
「そのために配ったもんやないんか。」


傍に行ってよう見たら、財前の顔には疲れが見えた。まぁ財前は性格は難なりやけど顔はええからな…学校祭やっちゅーこってなんかされたんやろうな。
俺にはお笑いの意味でのファンが多いんやけど、顔のええ白石や財前、謙也なんちゅーあたりはどっちかっちゅーとアイドルの意味でのファンが多い。きっと今頃白石達ももみくちゃにされとるやろう。

案の定、といった所らしく「戻りたくないんすけど…まぁ行きましょか。」と肩を落としつつ自分の教室の方へ歩き出す財前の後ろを黙ってついて行く。何があったかっちゅーのは聞かん方がええやろうな。


「なに食べます?あ、ユウジ先輩は決まっとりますけどね。」
「は?」
「この俺がわざわざ作るスペシャルミックス七色に輝く伝説のかき氷。」
「死なすど財前…!」


チラリとコッチを向きニヤリと笑ういつもの財前らしさが漂う言葉に落ちつくような恐ろしいような…なんやその人体に悪そうな名前のかき氷は。
嘘であってほしいんやけど、願いながら財前を睨めば横からは笑い声。慎がクスクスと小さく笑っとるのに胸がドキッとするんやけど、きっと財前はガチやから困る俺の気持ち…!


「笑い事やないで慎。」
「だって七色だよ、凄く豪華じゃん。」
「そうそう、苺とメロンとブルーハワイと檸檬と抹茶と…苺とブルーハワイを混ぜて作る紫に全部を混ぜて作る黒ってめっちゃ豪華やないすか。」


上げられる色がかけられたかき氷を想像するだけで…もうアウトやろそれ!
ブンブン頭を振って考えたことを否定すれば、また聞こえる笑い声。あぁ耳がくすぐったいやないか、幸せな悩みを抱えながら慎を見れば「ごめんごめん」と笑ったまま謝ってくれる…んやけど、見たいんやろ財前が作るスペシャルミックス七色に輝く伝説のかき氷…。

なんちゅー役回りなんや…嘆く俺の肩をポンポンと叩き「本当にごめんって」とまた謝る慎の方へクルリ、体ごと振り向き足を止めた財前に釣られ前を見れば「つきましたけど?」と指差された財前のクラス。


「ほな、慎先輩は何味にします?」


ちゃっかり慎先輩やなんて慣れ慣れしく呼びよる財前が「中どーぞ」とズカズカ入っていく。そんで『かき氷』と書かれたのれんを張った黒板前にずらりと並ぶ机はカウンター代わり、その内側へ回りこみコッチへ来いと手招き。

カウンター代わりの机の上には幾つもの瓶が並んどった、その中を満たす色とりどりのシロップ。そして昔懐かしのハンドル式かき氷機。氷が入っとるやろうクーラーボックス。
財前の性格てきに俺はてっきり他の奴に作らせるんやと思っとった…けどほんまに財前が作ってくれるらしくワイシャツの袖をまくりあげ、空のカップを手に俺達を待つ。
言うた約束は守ってくれるんやな…と財前の意外な一面に感激しながら、いきなり帰ってきたイケメンに先に居った財前ファンが騒ぐ中、俺達は財前の目の前まで歩く。


「財前君。俺、苺がいい。」
「俺は檸檬がええ。」
「せやからユウジ先輩に選択権はないっちゅーたやないすか。」
「本気で七色するんかい!!」




まともなものを下さい




「オマケでポッキーもどーぞ。」
「ありがとう!いいの?」
「ええんです、俺からのお祝いなんで。」
「おいわい…?」


「ユウジ先輩、俺がわざわざ作ったスペシャルミックス七色に輝く伝説のかき氷ポッキーぶっさしverはどーです?」
「……ポッキーの美味さが身にしみる味やな。」


-----


カオスinかき氷


2014,03,10

(prev Back next)


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -