Paranoia
白いままでいられると思ったことはない。
こんなにも、この愛は一途で綺麗で唯一無二で尽きることはない永遠の愛で。
それを守るためなら、なんだってする。
なんだって、する。
慎先輩の周りを囲うレギュラーメンバーなんかいなくなればいい。クラスの人間も先生たちも誰も彼も。いっそ慎先輩の家族も邪魔だ。
自分の愛を邪魔するのは許さない、今日だって慎先輩に触れる皆が憎い、絶対に仁王先輩は肩に手をまわすついでに首を絞めようとしているに違いない。その白くて細い傷一つない首を絞めて息を止めて、最後に自分の姿を刻みつけるつもりなんだ。
柳先輩だっていつも話している時、さりげなく頭を撫でたりしている。そうやって頭を撫でて自分のペットとでもいいたんすか?ペットにして首輪をつけて鎖でつないで部屋に閉じ込めて、自分だけの世界へ連れて行く気なんだ。
丸井先輩はいつもお菓子をおすそ分けして。何時の日かそのお菓子に毒をいれるに違いない、死んでしまう程の毒なのか、体の自由を奪うための毒なのか…どっちにしたって毒だ。今は下準備しているだけ、何時の日かのために信用を得ているだけ。
他だって同じ、慎先輩の事を殺そうと…自分の物にしてしまおうとしているんだ。あぁあぁぁ…やっぱり、俺以外はこんなに怖い。
守らなきゃ、守らなきゃ。俺の慎先輩、守らなきゃ。
もう二度と俺以外の人が慎先輩に触れないように、話しかけられないように、見てしまわないように。
その手を折って、その手を落として。
その口を縫って、その口を結んで。
その目を取って、その目を潰して。
その体を動かす全てを、壊してしまえ。
ブシャア、飛沫を上げる血に優越感を覚えた。見たことのない先輩たちの顔が俺の何かを目覚めさせた。全ては慎先輩のためだけ、全ては、全ては全ては全ては…
「あか、や?」
「…あれ、慎先輩じゃないっすか。」
真っ赤な部屋は脳の奥を揺り起こしてくれるほど刺激的。床に転がる色々な肢体は誰のものだか分からないほど赤に染まって泣いていた。そこへ差し込む一筋の光は、慎先輩の影をくっきり形作りながらこの部屋の美しさをまざまざと見せつける。
信じられない物を見た時、人はこんなにも瞳を見開くものなんだって先輩達を痛めつけている時から気付いていたけど…慎先輩、なんでその顔をしているんだろう。
これは慎先輩のためだけにやったこと。驚くんじゃなくて喜んで欲しいのに。やっとやっと解放されたんすよ?先輩達からの嫌がらせから解放されたんすよ?あのままだったら死んでいたかもしれないのに…なんで?
「慎先輩、もう何も心配しなくていいんすよ。これで終わりますから。」
「なに…いって、るの…これ…これ…っ、」
「やっと守れる…やっと、」
「あかや…おまえ…みんなを、殺した…のか…?」
…ころし、た?ころした…ころ、した?
殺した?
「…え…」
違う。俺は、
「どうして…なんで、みんなを…っ!」
ただ慎先輩を守るために。
「ひどい、酷過ぎるだろ!!」
それなのに、
「あかや…なんで、なんで…っ」
そんなに泣いているの?
そんなに俺を責めるの?
だってコイツらみんな、
「だって…慎先輩を殺そうとしていたから、俺が守らなきゃ。」
Paranoia
泣いている先輩が可哀想だった。
それなのに先輩は俺の事を可哀想だって抱きしめてきた。
赤い赤い俺の、体。
慎の涙が体に落ちれば、そこだけ元に戻っていく。
ただそこから、俺が気付けなかった異常が見え始めてきて。
俺は何に怯えていた?
どうしてこんな道を辿ってしまった?
俺は、俺は、
なにと戦っていた?
「あ、あははは…」
床に転がる視線は以前の輝きを失った冷た過ぎる視線。
「人殺し」って、責めてくる。
俺、ありもしない何かと戦ってきていたって、やっと気付いて、
取り返しのつかないことしたんだって、やっと泣けた。
----------------
中途半端ですが。
赤也のキャラソンって
厨二っぽいのが多いような…そうでもない?
2013,07,15
(
Back )