ナイトメア



耳を澄ませてごらん?聞こえませんか?
聞こえない?あぁそうですか。

耳を凝らしてごらん?見えませんか?
見えない?あぁそうですか?

なら、良かった。


「慎君。」
「…えと、白石だっけ。」
「おん。なぁ君、謙也と仲良かったやん?」


綺麗な綺麗な顔している。人形の様なきめ細かで滑らかそうな肌、ガラス細工見たいなキラキラの瞳、すっとなぞると心地良いだろう鼻筋、薄くてキリッと整っている唇、甘い甘いミルクたっぷりの紅茶の様な色した髪。

気持ち悪い。

あ、嫌いじゃないよ。綺麗だと思うよ。ゴメンね誤解を生むような言い方して。
俺が気持ち悪いって言ったのはアレ、


(気安く謙也の名前呼ぶな。)


嫉妬っていうの?ソレだから気にしないで。俺ってその辺の普通の人には理解してもらえないほど謙也が好きなんだ。好きすぎて俺以外の人が謙也の名前呼んでいる所見るだけでイライラしちゃって。
それで結構謙也に迷惑かけているから反省しているんだけど、好きだからしょうがないんだよなー、悪気ないしこの話したら謙也は「あかんで?」って笑って撫でてくれたんだけどね。


「最近休んどるから、メールとか電話とかしとるんやけど返事返ってこーへんから…なんか知らんかなて思うて声かけたんやけど…。」


あぁ、そうだった。謙也テニス部のレギュラーだからね。そりゃ心配だよね大切な戦力だし。
それに白石は部長だもんな、そっかそっか…なら許してあげる、名前を呼ぶのもメール出すのも電話かけたのも許してあげよう。


「ごめん、俺も知らないんだ。」


でも許すだけね、俺と謙也の世界に入ってこないで。


「…ほんまに?」
「うん。」
「ほんまのほんまに?」
「しつこい、知らないって。」


睨んだって答えは変わらない。お前らが俺の謙也を見つけ出すまでソレは変わらない。何回聞かれたって変わらない。
だいたい、謙也を見つけられないお前らが悪いんだ。

まぁしょうがないけど。お前らの濁った瞳じゃ見えないんだろうね、俺の隣にいる謙也を。

ずっとずっといるのに。謙也はお前らの濁った瞳とは違って綺麗な瞳をしていたよ、そりゃもう綺麗過ぎて部屋に飾っちゃうくらい。
爪なんかね、花弁みたいにきっちり整った形だったからどうしようか悩み中。穴を開けるのも勿体ないし、水の中に入れるのも勿体ない、いっそ押し花の様にしおりにしてしまおうかな?

ま、そんな楽しいお話は置いといて。


「白石、俺も本当に分からないんだって。」


今は嘘をつくので手一杯だ。
謙也がいなくなって数日、家の方も相当騒いでいるみたいだし。行方不明、拉致、事故、家出、良い子だったのにと嘆く両親に何度も聞かれた。それこそ白石以上に色々聞かれた。答えは1つだけだけど。

「しりません。」だけ。

もう名演技ってくらい一緒に泣いてやった。俺ってば謙也のためならばいくらだって泣けるから。
だって言えるわけないじゃん。

「息子さんは俺が美味しく頂きました。」って。

可愛い謙也、俺だけの謙也、俺になっちゃった謙也。あぁもう愛おしいなぁ。
例えコレが謙也のためにならなくて、謙也の周りの人間を泣かせたとしても、俺にとっての大正解だから気にしない。
謙也が誰かの目につく事は無くなったし話す事も名前を呼ばれる事も無くなった、俺にしか感じられない謙也の存在、これ以上の幸せなんか無い。

だから詮索するもの全部嫌い、お前もだよ白石。


「……慎君。」
「だから知らないって。」
「いや、それは分かったわ。」


ならさっさと何処かへ消えて。心の声とは裏腹に笑えば、白石も何故か笑い返してきて。


「油断すると、痛い目みるで?慎君、自分だけが狂っとるって思っとるやろ?嘘つき続けれると思わんこっちゃな。」


そんなこと言って背を向け歩いていった。

狂ってる?俺は狂ってるの?
一心同体となった謙也が愛おしいのに。
側にいる、今もこれからも。







その次の日、俺の家に差出人の名前がない封筒が入っていた。
宛名は天城慎。一体何なのだろう、と封を開ければ、


「……」


鮮明に蘇る愛おしい人との真っ赤な俺だけの記憶を、数枚の写真という形になっていて。


「なんで、」


俺の家から少し離れた廃墟で起きた出来事。

一枚目は逃げられないようにって、謙也の自慢の足を切り落としている時を。
二枚目は誰かを触らないようにって、謙也のテニスをする腕を切り落とした時を。
三枚目は俺だけの物になればって、キスをしながらお腹に刃を入れ縦に開いた時を。

まだ何枚も何枚も、俺の罪の証拠をソレは立証する。


「なんで、なんで、」



「言ったやろ?」





ナイトメア





「嘘、つき続けられるって思わんこっちゃなって。」


綺麗な綺麗な笑顔。
高そうなカメラを片手に、彼は俺の目の前に立っていた。
信じられないと彼を見る俺の顔を、許可も無く撮った。


「自分だけが狂っとるって思ったらあかんで?





俺も、慎君好きすぎて狂っとんねんから。」


悪夢は続く、謙也から俺から、白石から。


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ぐろ?
カニバ表現は薄いですね…
どっちかって言うとグロメインになっちゃった。

こういうのも好きとかそんな…

2013,06,12


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