小咄 | ナノ

僕は一瞬何を言われたのか分からなくてただただ突っ立っていた。目の前で般若のように顔を歪めるリンダちゃんがしだいに遠ざかるように感じられた。

「あんたは私を見てない」

今のはリンダちゃんの声だろうか。えらい低音ボイスで僕の柔な心にずっしりとのしかかる。手足は未だに数ミリも動かず、僕は目の前のピンクの髪の子をぼんやりと見ていた。

「ちゃんとリンダちゃんのこと見てるよ?」

「見てない。あんたはただ好きなキャラを私に重ねてるだけでしょ。私自体を…好きにはなってない」

リンダちゃんその'あんた'って言うのやめてくれないかな。ちゃんと僕にはガスパロってかっこいい名前があるんだ。そう言うとリンダちゃんは何も言わないでどこかに行っちゃった。後ろ姿がどんどんどんどん小さくなっていくのに僕は引き止めようともせずただただ突っ立っていた。僕はリンダちゃんのこと大好きなのに…だって毎日リンダちゃんのこと考えてるし、毎日リンダちゃんのこと思ってるし、なんでリンダちゃんは分かってくれないのかな。自分の心を探ろうとすればするほど僕は分からなくて、僕は頭がパーンなった。

(アメイジングワールド)


考えても考えてても答えにたどり着けない。こんなのムリゲーだよ。


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リンダちゃんの乙女心は複雑怪奇です。
お題:箱庭