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少女は歩き始める(1/2)


茶道の時間はお茶菓子が食べれて好きだったけれど、ずっと正座をしているのは痛くて嫌いだった。
お世話係の人にもっと女性らしくお淑やかにするよう口酸っぱく言われていたが、女の子らしくがわからない私は今の今までそんな風になれていたか怪しい。
当時の私はそんなことを言われても、頭の片隅では今すぐにでも庭で悟と鬼ごっこがしたかったし。
しかしながらそんな嫌いな正座も、女らしさも、今日という日は熟さなければならない。
粛々とした空気の中、私は家を出ると伝えたが、お父様は顔色を一切変えなかった。それとは対照的に、横で聞いていた義弟はにやけ面をさらに深くしていたが。
「またお得意の悟君に泣きついたんか?いいなあ、なんでも自分の思い通りに事が進んで」
相変わらずの減らず口に、私は反応せず黙っていた。義弟は無視ー?と茶化してくるのが腹立たしいが、ここで喧嘩を買ってしまっては負けだ。
お父様は騒がしい義弟を制すと、薄い唇を開いた。
「恥晒しなお前を自由にさせてやっていたのは、後継を産ませるためだ。それはわかっていただろう」
淡々と紡がれる異常な言葉に私はこくりと頷いた。
自分が家に置かれていた意味も、家を出ることがどれほど親不孝で世間体が悪いかも重々承知している。
でも、私はこの家のために人生を棒に振りたくない。

「ここまで育ててくれたことには感謝してる…ます。でも、これからは一人でも生きれるようになりたいんです」
痛いのも怖いのも嫌だ。
でも、自立するために箱入りの私にできることは限られている。
「呪術師になって稼いで、今までの工面してくれた分お返しします。だからもう、」
そう言いかけたところで、甲高い笑い声が響いた。

「ひー。何を言うかと笑い堪えとったら義姉さん呪術師なんの?やばいわー」
こいつは相変わらず人への煽りは一級だ。私は無視して、話の続きをしようと息を吸った。
「だから、」
「ここで俺のことボコしたらいいよ」
何を言い出すかと驚いて義弟の方に顔を向ければ、どうすんの?と首を傾げながらこちらを見下ろしてそう言った。
戦闘経験もない私になら余裕で勝てると思っての提案なのだろう。
「…別にいいよ」
泣いてもやめてあげないけど。

白雪家の相伝の術式を私が知らないわけないのに。手の内全てバレているのに向かってくるなんて。なんて無謀なのだろう。
今迄卑下されてきたが何も感じなかった。プレッシャーもないし寧ろお気楽な立場に私は居たから。
そんな卑下してきた義姉に負けるのはどんな気持ちなんだろう。