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未来は黄金色 (3/3)


暑さに額に手をやり前髪を掻き上げた。見慣れない和室に寝ぼけた頭はここはどこかと戸惑う。
重たい首だけ動かせば、横に悟が寝ていた。寝ている姿は幼くて、凛々しさから離れた穏和な雰囲気はいつ見ても母性を擽られる。
普段より少し距離を感じたのは隣合った布団に寝ていたからで、そういえば本家にお邪魔していたのだっけと思い出す。
昨日は何かと精神を削がれて疲弊しすぐ寝てしまった。こんなにぐっすり寝れたのはいつぶりだろう。毎日鳴っていたスマホは昨日は全く鳴らなかった。
さっそく悟が手を回したのか、五条家の圧なのか。

こちらを向いて寝る無防備な姿に寝付くまで見守ってくれていたのかなと頬が綻ぶ。
毎日触れ合って寝ていたから、今日分の悟くん成分が充電されていない。
じりと隣の布団に寝転ぶ旦那さんに近寄る。
同じ目線に横になり薄い掛け布団をぺらと捲ると着流しからはだけた胸元が現れた。視線が釘付けになり生唾をごくりとのむ。
つつと人差し指で鎖骨を通り、胸筋の間をなぞり、心臓まですべらせる。
人形の様に静かに眠っているが、とくん、とくんと規則正しい音が耳奥深くに響く。
私がプロポーズされた時、喉からこうして心臓の辺りまで悟の指がすべってきて、殺されるかもってどきどきなのか好きすぎる気持ちなのか、きっとどちらの気持ちだったことを思い出す。
今では後悔してないけれど、昨日はちょっと考え直すべきかと思った。
でも悟は守ってくれたし珍しく気を利かせてくれた。悩むのもばかばかしいほどだ。
視線を上にやると、綺麗な蒼にはっと我に返って指を離した。
「よばい?」
「もう朝だよ。」
寝ぼけ眼でさらに幼さを増す悟は、掠れた声で言うものだから、言葉の割に合わず可愛いさを醸しだしている。
んーと唸りながら緩慢な瞬きを繰り返し、脇から腰へと手が回され、寝起きとは思えないなか強い力で引き寄せられた。
勢いあまり、息がかかる距離まで近づいてしまい、迫る綺麗な顔に思わず首を後ろに引いた。
「誘ったのはそっちでしょ。」
オブラートの薄さ1枚も距離がないほど唇が迫っているところで囁かれ、あわあわとしていれば唇が自然に開いてしまった。
妖艶に笑った悟は食むように唇をくっつけ、するりと太ももを撫でてきた。
擽ったい刺激にぞくぞくと背筋に電流が走る。
力の入らない指先で肩を叩いた。
だがそれすら厭わない無骨な指先は、触れるか触れないかの距離で脇腹を滑り、お腹、胸元にできたずれた隙間に侵入してきた。

「のーぶら?」
キョトンとし、甘えるような声で布1枚も隔てないまま、ふにと胸を摘まれた。かわいこぶってるのにその所作は全然可愛くない。
訊かなくてもわかってるくせにと熱さに頬が爆発寸前だった私は、涙目になりながら頷くしかできなかった。
「そういうのって計算?」
「どういうの?」
「最近のお前、僕が起きる時いないし。お預けしといて甘えてくる作戦だったのかなって。」
作戦なんてそんなつもりはなくて、悟に伝えてない任務で呼び出されてただけだ。
上がっていた心拍が徐々に下がり私は無言で首を振った。今まで朝から悟には寂しい思いをさせてたのだろうか。
「今日は傍で寝れなかったから、悟くん不足を補給しようとしただけだよ。」
最近起きる時、傍にいれなくてごめんね。と言いながら、胸から剥がした手を掴み、慈しむ様に指先をゆっくり絡めて頬に寄せた。そのまま悟の手の甲に口付けし、上目遣いで悟の機嫌を伺う。
起きた時傍にいないのは不義理だったかもしれない。彼女、もといお嫁さん失格だと言われたらどうしよう。良いお嫁さんとは、そんな参考書はあっただろうかと本屋を思い浮かべるが店で見てみないとわからない。
「実家じゃなかったら危なかった。」
「何が?」
「内緒」
「別れたいとかじゃない?」
「それは絶対ない。」
悟は綺麗な瞳を細めてそう言って、私の手の甲に唇を落とした。
危ない理由が別れの危機だったら、私は息たえだえに気絶していただろう。一先ず避けられて安堵した。
「やっと家に帰れる。今日は家でゆっくりしよ。」
悟はむくりと起き上がって、寝ている私の頭を撫でた。それ好きなんだよなあ。と思いながら目を閉じて頷いた。
久しぶりに感じた微睡みの幸福に、悟の腰に抱きついた。





  
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