(視点.榴花)









 暑い。とにかく、暑い。

「…あー……」

 現在の気温三十三度、これから三十五まで上がる予報。
 むり、しぬ。

「…いー……」

 公園の木陰、ベンチの上、ぐったり横になってとりあえず一休み。ブラウスのボタン二つなんて余裕で開く。扇ぐもの、なし。風、なし。無風。死ね大自然。
 あぁ…寧ろクーラーなんぞ使ってる家を恨むべきか。廃熱死ね。

「…うー……」

 そもそも人間はさ、クーラーなんてなくても生きていたわけですよ。扇風機すらなかった時代があるわけですよ。今のクーラーなきゃ死ねるわーかっこわらいなんて言ってる奴らだってその気になりゃクーラーなんかなくても生きていけるわけで死にはしないと思うし寧ろその廃熱でヒートアイランド現象なんてものが起きてるあたりクーラーってほんと人間にも地球にも優しくない。地球温暖化にも大貢献しちゃったりして。いや知らんけど。あたしがクーラー反対派なだけで。あんな人工冷気気分悪くなるだけだわ。

「…えー……」

 そんなわけわからんこと考え始めてるあたしの頭もそーとーやばい。あーとかいーとかうーとかえーとか意味わからん言葉吐いてる時点でやばい。道端で倒れかけたあたしのために自動販売機へ走っている友人は今どの辺りだろうか。ああ…うん、ほんとごめん。こんな炎天下歩かせてごめん。ついでにあたしなんかが友人とか言ってごめん。週三で倒れてごめん。
 昔はそれこそ夏でも外で遊んでたのにな。今じゃ満足に外も歩けない。暑い暑いって唸るだけで、気温と時代が違うとか言っちゃそれまでだけどさ。学校のプールで遊ぶ子どもは見るけど公園で遊ぶ子どもは滅多に見ない。時代か、やっぱ時代なのか。クーラー死ね。

「…おー……」
「…大丈夫?榴花」
「紫苑……今なら水の中でも生きていける気がする…」
「は?」

 うん、は、だよね。あたしも「は」だわ。

「緑茶で良かったですか?水もあったんだけど…」
「ミネラルウォーターとか飲めないからいい……ありがと」
「どういたしまして」

 あー、いい。ほっぺにぴとりとくっつく冷えた物体がとても気持ちいい。それにしてもたった今戻ってばかりの友人は本当に暑そうだ。…うん、ほんとごめん…。
 走らせてしまった友人には帰り途中でアイスを奢ろうか。ジュース買ってもらっちゃったし、二つとか三つくらい。そんなに要らないって言われたら次回に回そう。反論は認めない。

「…人魚姫がうらやましい……」
「…榴花、本当に大丈夫……?」

 アイスといえば。いつもお世話になりすぎている保健室のセンセにも明日買って行こうか。イチゴのやつ。かき氷がいいかなシャーベットがいいかなラクトアイスがいいかな。あぁ、全部一日違いで買って行こう。週三分。





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執筆.秋冬さま

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