(視点.暁月) そこら辺をぷらぷらと歩いて、そこら辺に居るどうやら一年を捕まえた。名前はなんとなく耳にしたことがあるような気がしなくもない。嵐草薙。あんまり穏やかではない噂で最近有名になってきている、所謂問題児くん。コイツだったとは。
「楽しいかどうかは個人差があるなあ」
けらけら笑いながら言うと、細められた赤い目が険を増したように鋭くなる。癇にでも障ったのかね。ああ、それとも元々目つきが悪いだけなのか。
足元に転がる誰かを爪先で蹴った。邪魔だから。
身の程、知らず。
ああ、ほんとに邪魔くさい。
手を掴もうとしたら振り払われた。
「……触んな」
「うっわひっでー。疲れてるならおんぶでもしてやろうかと思ったのにー」
「そんな柔じゃありませ〜ん。アンタと一緒にしないでくれますかぁ、センパイ?」
「これは失敬。とりあえず、どっか涼しいとこ行かね?プールとか」
「………」
声を掛けたのに深い意味なんてもんはない。ただ、この暑苦しい気温を誤魔化すのに、何か適当な『暇つぶし』が欲しかっただけで。
そしたらソイツが居たもんだからさ。丁度いいって思って眺めてた。
眺めてただけさ?声を掛ける気は更々なかったんだがなあ。
酷くつまらなさそうなあの赤い瞳を見て
ああ、コイツ面白そうだな、って。
「とーちゃーく!」
ボロくなって外れやすくなった錠を門を蹴って外して、それごと蹴り飛ばして駆け上がる。すげぇウザそうな目で見てくるソイツが、これ以上ないってほどめんどくさそうに登って来て、
その背を思いっ切り蹴り飛ばした。
「なっ…?!」
バシャンッ!
制服が、濡れた。
「…っ……て、…めぇ……」
ああほら、そういう瞳だって出来んじゃん。
「───ほら、涼しくなったろ?」
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執筆.秋冬さま