掌の上に懇願のキス




彼は私の右手をとると、忠誠を誓うように私の前に跪いた。恭しく私の右手に額を寄せ、震える声で吐息のように言葉を漏らす。

「お願いですから、」
彼のダブルスパートナーの無骨な掌に慣れた私の手は、ピアニスト然としたしなやかで大きな掌をなかなか受け入れない。
「お願いですから、」
銀色のふわりとした髪がかすかに震えている。彼の額に触れている手の甲があつい。その純粋な瞳からあふれでた生暖かい体液が指に触れ、爪を伝い床に音もなく落ちた。

「宍戸さんをとらないでください」
弱々しく震える声は窓を打つ雨音よりもささやかだった。
彼は私の掌にその自分勝手な想いを吐き出す唇を寄せる。祈るような彼の願いに銀色の十字架がきらりと光るのを冷めた目で見ていた。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -