藍に溶ける(幸村)

泣き出しそうに寂しげな空からため息のようにふわりと雪が降ってきたのは、ちょうど昼前の授業が終わった頃だった。窓際の私の席からは空に同化する幽かな雪をしっかりとらえることができる。
「通りで寒いと思った」同じく窓の外を眺めていた幸村は、私の隣の席で頬杖をつきながらこぼす。「まだ11月なのにね」と答えると「秋雪っていうんだよ」と聞き慣れないきれいな言葉を教えてくれた。
「不思議だよね、積もりはしないのに海の上にも雪は降るんだよ」その科白に導かれるように遠く見える藍色を眺めた。確認はできないけどきっとあそこにも雪は降っているだろう。
自分が居たという確かな存在を残せない。どんなに降らせても海は何も変わらないし、雪が降っていることさえ知らないかもしれない。「そうだね」と返し、パリパリと音を立てる薄暗い教室の蛍光灯に照らされる藍色を横目で窺う。なるほど、不毛だな、雪も私も。

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