断崖絶壁今何処(宍戸)

大人になんてならなくて良かったのに。そう思わずにいられない私は年相応に成長していない、どうしようもない子供なんだろう。
「ちょっといいか」中間テストの最終日も終わり、開放的な喜びで満ちている教室の喧騒を切り裂いて、宍戸が私に投げかける。「え?」と言うか言わないかの間に手首を捕まれ、連れて行かれるがまま教室を出る。隣に座っていた友達がポカンとした表情で見ていたので、すぐ戻る、と口ぱくで伝えた。
ああ嫌だ。きっとまた、あの話だ。
話の内容に予想をつけた私は、胸の中にぐるぐると螺旋を描きながら広がっていく、よくわからない不快感を噛み締めながら目を伏せる。なんでこんなに泣きたい気持ちになるのかわからない。脈拍から鼓動が宍戸に伝わったらどうしよう。逃げないから早く手を離してくれ、とひたすら願い続けた。
いったいどこに向かうんだ、わたしたちは。

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