理由

砂埃でざらつく髪を指で梳く。細い髪が少しもつれ、軋みながら解けていく。
「なんだ日吉いっちょ前に髪の毛なんて気にして」
ぴょん、と飛び跳ねながら絡んでくる先輩に視線だけで答える。
「なんだったら俺の櫛貸してやろうか?ははっ」
そう言うと、今しがた自分が使っていた櫛をからかい混じりに差し出してきた。
「そんなことよりさっさと着替えたらどうですか」
「んだとこのヒヨッコが」
「岳人、日吉の言う通りやで。いつまでも樺地が鍵閉められへんやろ」
「今から着替えるとこだったんだよ今から」
忍足さんに叱られてしぶしぶと着替えを始める向日さんを視界の隅で見届け、制服を正して足元の鞄を背負う。だらだらと一人で着替えている向日さんの後ろを通り過ぎると同時に嫌味たっぷりに「お先に失礼します、向日先輩」と言ってやると、案の定カッとして突っかかって来る。単純極まりない。忍足さんに「ええから早よ着替え」となだめられるのを聞きながら、ざまぁみろと心の中で履き吐き捨てて部室のドアを閉めた。

「日吉は部活終わっても髪の毛さらさらだねぇ」
「そうか?」
「いいねぇ綺麗だねぇ」
「ふん、まぁな」
「日吉の髪とても綺麗で好きだよ」

(別にこの言葉があるから気をつけるようになったわけでもないけどな。)

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