千石清純とプロポーズ

「結婚してみない?」

付き合って、6年。お互いの年齢的にも、金銭面でもたしかに頃合だったと思う。
でもそれは、普通の恋人同士の場合であって、私たちには当てはまらないものだと。

およそ、生涯かけてこんな言葉を口にすることがないだろうと思っていた相手から飛び出したその言葉は、私の思考力、判断力、もしかしたら視覚さえも一瞬奪っていったかもしれない。
思考停止状態というのだろうか。分かりやすくいうと、私はポカンとした。

当のその相手、千石清純(27)は別段変わったところもなく、いつも通りの口角を上げてへらりとした表情を私に向けながら、小首を傾げてみせる。

そう、相手はあの千石清純だ。愛の迷子。恋の伝道師。6年付き合っている私でさえも、自分が本当にこいつの恋人なのかを疑っている。そういう男だ。結婚なんて甲斐性、死んでも持てそうにない。生涯の愛なんて星の数ほどありそうな、あの千石清純が。

「結婚って、誰と?」
この素直すぎる疑問は、当然だろうと思う。
しかし目の前のゆるい顔をした相手は、一瞬きょろりと目を丸めたあと、より一層しまりのない笑顔で私の左手を取って言うのだ。
「君とに決まってるじゃ〜ん」

「ば・・・」
かじゃないの。
そう、いつもなら簡単に言えたはず。
軽く肩をたたいて、信じられないだのうそばっかりだの言って笑えるはずなのに。

ふっとまじめな顔をした清純が、左手の甲にゆっくりと口付ける。
「そーやって泣いちゃうとこ、すっごく女の子っぽくて可愛い」
「・・・ばっかじゃないの!」

こんなときばかりまじめぶってかっこつけるのだから、こいつはほんとうにろくでもない。

「まぁでもその涙的に返事はオッケー?」




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ゴクセンスミキヨさんの幸せを祈る会。千石さんは「可愛い」は生涯愛する人に使ってもらいたい。ふつうの女の子には、「カワイイ」。



2014/10/20 01:13 tennis


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