しえみに根を張っていた下級悪魔を無事祓った後、しえみに祓魔塾に通ってみないかと誘ってみた。
庭先の階段に二人並んでお茶を啜り、俯いている彼女を横目でみた。
「私なんかが行って…大丈夫なのかな…」
「だいじょうぶだいじょうぶ〜!うちの理事長そういうとこ緩いから!」
その辺は雪男がなんとかするでしょとあっけらかんと言えば、ゆきちゃんの先生姿かっこいいんだろうなぁと目をキラキラさせていた。
「…私もさ、しえみのおばあちゃん大好きだったんだよね。」
「え?透子ちゃんも?」
「うん。」
お茶を一口飲むと、まだ祓魔師になりたての頃を思い出した。
魔障を受ける前は教職に就くことが夢だった私は、祓魔塾を卒業して此方に残り、講師になることを決めた。
初めての生徒には舐められ、同時に祓魔師の仕事はキツく辛いものだった。
そんなある日、何時ものように買い物をしに祓魔屋へ寄ると、おばあさんが一人この階段でお茶を飲んでいた。私も流れで誘われて、差し出されたお茶をこんな風に啜ったのが最初だった。おばあさんは私の話を何時も黙って聞いてくれ、そして話し終わると必ず「いつでもおいで。そしたらここでまた一緒にお茶を飲もう」といって笑ってくれた。
そんなおばあさんが大好きだった。
「おばあさんね、良くしえみの話ししてたよ。」
「おばあちゃんが?」
「うん。“しえみがいつか自分で外に出たいと言ったら祓魔塾に入れてやってくれないか”って言われたことあるんだよね。」
「え…!?」
「“自分の意志で行きたいと言ったらでいいんだ。透子ちゃんがいるなら、しえみのこと任せられるから”って。嬉しかったなぁ。私講師向いてないのかなって思ってたから、その言葉で頑張ろうって思えたんだ!」
「おばあちゃん…」
祓魔師は危険だし、そう甘くはない。それでも…
「私はしえみにもっと広い世界を見て欲しいな。」
お茶を置いて御馳走様と告げると、立ち上がり振り返る。
「じゃあ私帰るね!祓魔塾の事、雪男に相談してごらん。」
そして翌日。
「新しい塾生の杜山しえみさんです。」
「よ…よろしくお願いします。」
祓魔塾にもう一人仲間が加わった。