石灯籠に灯る火の光だけの薄暗い闇が長く先へと続いていく。
「きゃあ!」
(しえみ!?)
転んだ様子のしえみの背後から、数え切れない程のミイラが霧とともにヨタヨタと進み、今にもしえみに襲いかかりそうだった。
「うおーっ!!燃え尽きろっ!」
咄嗟に背負った降魔剣を鞘から取り出すと、青い炎と力が身体に広がる。振りかざした刀から青い炎をミイラに放てばたちまち燃え広がり、一瞬にしてミイラの大群は姿を消した。刀を鞘に戻せば闇を照らす日の出。
「助けてくれたのね、ありがとう!」
「当然の事をしたまでです。」
(ヤベー!俺ちょーカッコイイ!!)
「流石奥村くん!」
「貴方こそ真の祓魔師だわ!」
「いやぁ、それ程でも。」
どこからか現れた祓魔塾の奴らが俺のことを誉める。あのまろまゆですら俺のことを褒め称えている。
「ゆうてはなんですが…」
「どうぞ召し上がってください。」
そう言うと、子猫丸と志摩はぐつぐつと鍋の中で煮立ち、湯気が上り如何にも熱々なソレを差し出してきた。
「うぉー!?わぁーい!」
「「「「「おめでとー!」」」」」
拍手とお祝いの言葉が俺に向けられる。
(生きてて良かったー!!)
…村くん
目の前の鍋に箸を向ける……
「奥村くん!」
「スキヤキ!?」
目の前にあったスキヤキは消え、変わりに現れたのは宗教歴史学のせんせーで、クラスの奴らはみんな席に着いて教科書を読んでいる。
(あれ、夢!?)
「………起きなさい。」
「…ス、スンマセン…」
今は祓魔塾の授業中。
知らぬ間に俺は眠ってしまっていたらしい。
「なんやアイツ…何しに来てん。」
初日から問題ばかり起こすアイツは奥村先生の兄貴らしいが、なんや毎日寝てばかりで目障りでしょうがない。
俺の声が聞こえたんか此方を覗く阿呆面見るだけで頭が痛おなるわ。
「いねや!」
勉強どころか起きてることすら出来んらしい奥村は、その後も毎回毎回飽きもせずに先生からの注意を受けている。
俺はああいう意識の低い奴が大嫌いや。何のためにここに居るや、アイツは。
悪魔薬学の時間。
小テストが返却されるなか、隣の女と騒ぐアイツに怒りが沸点に達した。
大体あの女も何なんや!?このご時世に着物なんか着て、アイツ同様基本的なことすら知らんらしい。
「2点とか狙ってもようとれんわ。女とチャラチャラしとるからや。ムナクソ悪い…!」
「は!?」
98点のテストを見せつければ、人が一番気にしていることをいいやがりよって、俺は授業中にも関わらず怒りを爆発させた。
「俺はな祓魔師の資格得る為に本気で塾に勉強しに来たんや!!塾におんのはみんな真面目に祓魔師目指してはる人だけや!お前みたいな意識の低い奴目障りやから早よ出ていけ!!」
「な、何の権限でいってんだこのトサカ!俺だってこれでも一応目指してんだよ!」
(トサカっ!?)
「お前が授業まともに受けとるとこ見たことないし!いっっつも寝とるやんか!!」
「ぼ、坊…落ちついて…」
「授業中ですよぉ坊…」
暴走した俺は子猫と志摩に抑えられ、授業が終わった。
「全く何なんやアイツは…!!」
「まぁまぁ…」
「大人気ないですよ、坊。」
「うっさいわ!!黙っとれ!!」
「どうしたの勝呂?荒れてるねぇ。」
体育実技の為廊下を歩いてると八坂先生が近づいて来よった。この先生は厳しいが授業もわかりやすいし、個人的には好印象なんだが、なにぶん今は機嫌が良くない。
「別に…」
「ふーん?」
「すんませんねぇ、透子先生。坊は今奥村くんと喧嘩中で機嫌よろしゅうないんですよ。」
「志摩ァ!お前は余計なこんを!」
「全く燐は次から次へと…喧嘩は良いけど周りに迷惑かけたり暴力はしない程度にね!」
「「「(いいんや…)」」」
この先生は厳しいんだか緩いんだか…
「アイツは何もんですか?授業は全く聞かない、基本的な事すら知らないでほんまに祓魔師目指す気あるんですか!?」
「そうね…でも燐も色々背負ってるかも知れないじゃない?君たちみたいに。」
「!?」
「勝呂、貴方はあのクラスをまとめられる人。期待してるよ。」
ほんまなんなんや、奥村といいあの先生といい…俺がクラスまとめるやと?やる気も実力もない奴がいるっちゅうのにどうまとめろっていうんや。
それに俺は仲良しごっこをしにここまできたんやない…!一刻も早よう祓魔師になって奴を……!!
「坊、遅れますよ!」
「…あぁ…」
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