無気力少女は戦闘狂(バーサーカー) | ナノ


7、事故りました。  


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教室を飛び出してしまった僕は、校舎の屋上に来ていた。
何をしているんだ、僕は。
どうして逃げてきてしまったんだ。

怖い。
この世界で生きるのが。
この世界の人に関わってしまったのが。
この世界が変わってしまったことが。
――死ぬ気モードのツナ君のことが。

本当なら京子ちゃんのことを好きになるはずのツナ君が、先に僕と出会ってしまったから、僕の友達になってしまったから、京子ちゃんが遠い存在で無くなってしまったから、京子ちゃんに恋心を持たなくなってしまった。
それだけじゃない。
死ぬ気モードのツナ君が怖かった、ただそれだけの理由で僕はあれほど仲良くしてくれたツナ君のことを拒絶してしまった。

これで原作キャラと関わらずに済むかもしれない。
そう考えてばとても嬉しいことなのに、僕の中には後悔と自責の念が渦巻いている。

「きょ、恭華ちゃん!」

後ろから呼ばれている。
声を聞いただけでツナ君だとわかってしまう。
振り返るのが怖かった。

「恭華ちゃん、オレ……その……」
「ツナ君は……悪くないよ」

できるだけ無表情に告げる。
そうでもしなければ、僕は何かの感情に押しつぶされそうだった。

「悪いのは、僕の方だ」
「でもオレ」
「いいんだ。僕がいけないんだ。僕が、君たちに関わったりなんかしなければ良かったんだ」
「そんなことないよ!」

荒げられた声に肩がびくりと跳ねた。
その反動で思わず振り返ってしまった。
そこに立っていたのは、今にも泣き出しそうな顔をしているツナ君だった。

「関わらない方が良かったなんて、オレは思わないよ。恭華ちゃんは、オレに初めて出来た友達だし」
「僕がいなくても君には友達がたくさんできる」
「すごく優しいし」
「色眼鏡の使いすぎだ」
「オレは――」
「もういいんだっ!」

思い切り叫んで、少し後悔した。
ぐらりと視界が揺れる。
呼吸が辛くなる。
足が、少し震える。

荒い呼吸の中で、差し伸べられた手をそれでもなお振り払ってしまった。
ツナ君の顔が悲しみに染まる。

見たくない。
頼むからそんな顔をしないで。
僕のために君が悲しむなんてしてはいけない。
ダメだ。

「――バンッ」

無意識だった。

子供の遊びのように手を銃の形にして、僕の口はそう告げた。
刹那、ツナ君の顔が驚愕に染まり、静かに倒れた。

彼が床に落ちる音を聞くこともなく、僕の意識はどこか遠くへと沈んでいった。

**********

目を覚ました僕がいたのは、屋上ではなく、教室でもなく、はたまた保健室ということもなく、だからと言って自分の家ということもなかった。

僕がいたのは、ツナ君の家だった。

枕元にリボーンがいて、ちょうど奈々さんが水を持って部屋に入ってきた。
だけど、ここにツナ君の姿は、ない。

「僕……どうして」

何があったのかわからない。
どうしてここにいるのかわからない。
わからないことだらけだ。

「あれ、なにこれ……」

もう一つ、わからないことがあった。
寝ている僕が、どうして酸素マスクをつけているのか。

「恭華ちゃん、大丈夫かしら?」
「……は……い……」

奈々さんに答えようとして、声が出ないことも気づいた。
だから小さく頷く。
安心したのか奈々さんはそのまま部屋を後にした。

「お前、ツナと何があったんだ?」

奈々さんが遠くに行ったのを確認すると、ようやくリボーンが口を開いた。
何があったのか、僕にもわからない。
静かに首を横に振ると、リボーンは小さく息を吐いた。

「屋上を訪れた一般生徒が倒れてるツナとお前を見つけた。ツナはすぐに目を覚ましたんだがな、何があったのか混乱していてわからねぇって言うんだ。対するお前は、呼吸もせずにずっと眠りつづけた。2ヶ月もな」

2ヶ月……!?
眠るには長すぎるその期間に、僕は驚きを隠せなかった。

「気を失う前、何があった」

あの日、気を失う前に、最後に見た光景――
子供の遊びのように手で銃を作って、ただ一言、遊びのような一言を発しただけ。
ただそれだけなのに、ツナ君は倒れてしまった。

また、作ってみる。
親指と人差し指を立てただけの、単純な手遊び。
横になったまま、それを天井に向けた。

「バン」

ぴしり
小さな音を立てて、指の先にあった蛍光灯にヒビが入った。
僕も、リボーンも、目を見開いた。

何もない空間で、本当に銃が放たれたかのような現象が起きてしまった。

「お前……霞って言ったよな」
「……うん」
「屋号は、火炭(かすみ)じゃねぇのか?」

火炭なんて聞いたこともない。
だけど彼の目は冗談を言っているようには見えない。
その屋号と、僕と、何の関係があるんだろうか……。

「屋号、火炭家。幻と言われた手銃使いの家系だ」


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