無気力少女は戦闘狂(バーサーカー) | ナノ


5、やらかしました。  


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「ねぇ、なんでいるの?」

ある朝目が覚めると、なぜか枕元にネロがいた。
いや、むしろネロがいたから目が覚めた。
だってさ、寝返りを打った瞬間に「むぎゅ!」なんて声が聞こえたら誰でも起きるでしょ。
相変わらずの虚姿なのにやわいんだね、意外と。

「私の安眠がぁ〜……」
「邪魔されたのはこっちなんだけど」

早く本題に入ってください。
学校に遅刻します。

「あ、うん。なんか前に頼まれた気がしてた部屋がようやく出来上がったから、教えに来たんだ」

え、なんか頼んでたっけ……?
記憶の引き出しを必死で漁ってみる。
ああ思い出した。
防音でめっちゃ強度のある部屋作って欲しいって頼んでたんだっけ。

「あと頼まれてたやつも持ってきたんだけど……何する気?」
「見ればわかる」

ネロが大きめのダンボールを出す。
開けてみれば、中身は全部モデルガンだ。
言っちゃうのも難だけど、これは全部前世での愛用品。
お母さんに隠し通すの、大変だったんだよ。

訝しげな表情のネロと一緒に新しくできたという部屋に向かう。
念のために部屋の中でネロに大音量を出してもらって防音効果を確かめてから中に入った。

「まさかとは思うけどさ、撃つ気?」
「当たり前でしょ。じゃなかったら頼まないって」

装填完了。
構えて一発撃つ。

そう、これだよ、この感覚を味わいたかったんだよ。
こんなことができるのも転生して一人暮らしになった特権だね。

「よし、やりたいことはやったし学校に行くよ」
「えっこれだけ!? 私の頑張りって全部これのためだけ!?」
「うん、そうだけど」
「私の2ヶ月の睡眠時間……orz」
「へえ。虚も寝るんだね」
「だから虚じゃないって」

いやいや、その姿で虚じゃありませんって無理があるよ。
だっけ仮面つけてるし。
ああ、せめて破面の方がもっとそれっぽかったかもね。

「ねえ、学校は?」
「………………あ。行ってきまーす」




**********




体育の時間……鬱だ。
あんなに楽しみだったのにできないなんて、自分の体を恨むよね。
体育の時間さえなければ体が弱いなんて全く思い出さないのにさ。
ああ家に帰ってモデルガンの乱射したい。

「っ! ツナ君危ない!」

勢いのついたボールの先を見て思わず叫ぶも時すでに遅し。
ガコーンとあまりにも綺麗なほどにツナ君の顔面に直撃した。

「ったく何やってんだよダメツナ!」
「お前のせいで負けただろ!」

周りの男子たちは口々に文句を言っている。
よく言うよ、自分たちの暴走したボールがツナ君に当たったくせに。

ちょうど授業終わりのチャイムが鳴り、クラスのみんなはツナ君に後片付けを押し付けていなくなってしまった。

「あれ、恭華ちゃん?」
「手伝うよ。他にすることないし」
「ありがとう」

そこらへんに転がるボールを拾っていると、ツナ君がしきりにキョロキョロとしだした。

「京子ちゃんなら委員会があるからいないよ」
「んなっ!」
「別に驚かなくても、僕も花ちゃんも気づいてるよ。ツナ君が京子ちゃんのことが好きだってこと」

的確に告げるとツナ君は顔を真っ赤にした。
僕というイレギュラーがありながらもツナ君はちゃんと京子ちゃんのことを好きになった。
そんなに遠い存在じゃない、という決定的な違いはあるけど。

むしろ、近い存在だからこそ告白することで関係が崩れてるのを相当恐れてるみたい。

「恭華ちゃん」
「ん?」
「今日暇かな? 良かったらオレん家で一緒に勉強しない? 今日の授業でわからないところがあって」
「うーん……。うん、いいよ。できるなら解説るすから」
「ありがとう!」

本当はさっきも言った通り早く帰ってモデルガンを撃ちたいけど、どうせ防音の部屋なんだから夜に撃っても構わないだろう。

教室に戻って荷物をまとめる。
まとめる、というほどの荷物もないけど。

ツナ君の家は仲良くなった頃に一度だけ京子ちゃんたちとお邪魔したことがある。
リボーンが来る前の沢田家という貴重な場所は少し興奮した。

「お邪魔します」
「あら恭華ちゃん。いらっしゃい」
「今日は奈々さん」

奈々さんに挨拶をすると僕達はツナ君の部屋に行った。
2度目だけど、男の子の部屋は緊張する。

「それで、なんの教科?」
「えっと数学なんだけど……」

2人でカバンから数学の教科書を出して、授業の反復に入った。

とりあえずわかったこと。
僕はやればできる子だ。
最初こそ戸惑いはしたけど、それは今まで学校に通ったことがなかったから。
京子ちゃんや花ちゃんに一から教えてもらったところ、あっさりと頭に入ってしまった。

「沢田とのこの差はなんなのかしらね」

そうぼやいた花ちゃんの表情は今でも忘れない。

「ツナ君またそこ間違えてる。移行したら符号は逆だよ」
「えっ? あれっ?」
「あと、マイナス同士はかけたらプラス」
「あれっ??」

世界中のリボクラの皆さん、ツナ君に勉強を教えるのは思った以上に骨が折れます。

「ツッ君、ちょっといい?」

と、そこに奈々さん登場。
手には何やらチラシのようなものを持っている。

あれ?
これってフラグじゃない?
ヤバくない?

奈々さんが持ってきた話は、案の定ツナ君に家庭教師をつけるという内容だった。
読み上げられたチラシの内容もバッチリ。
これは、本当にまずいぞ。

「チャオっす」

突然聞こえてきた声に3人全員でびくりとした。
振り向いたそこにあるのは間違いなくリボーンの姿。
リボーンはじっとツナ君を見上げていた。

「お前がツナだな」
「なんだ、こいつ……?」
「オレがリボーンだ」

名乗るや否や、奈々さんとツナ君はめっちゃ笑い出した。
僕ですか?
笑ってる場合じゃないですよ。

とにかく、その爆笑はリボーンにとって不快だったらしく、ツナ君のネクタイをつかんで投げ飛ばしてしまった。
痛そう……。

「僕、冷やしたタオル持ってきます……」

巻き込まれ確定なこの事態で、なんとか部屋を出ることに成功したのだった。


[ | mokuji | ]







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