無気力少女は戦闘狂(バーサーカー) | ナノ


4、検査しました。  


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静かな病院の待合室。
連絡を入れて学校を休んだ僕は、同じようにして学校を休んでくれた京子ちゃんと花ちゃんに付き添いしてもらって並盛中央病院にやって来た。
平日と言うこともあって人が少ない。

「霞恭華さん」
「あ、はい」

名前を呼ばれて診察室に入る。
中ではいつくか質問を受けたり、しんぱくおんを聞かれたりして、その後にレントゲンと言うのを撮ると言われた。
僕が首を傾げると、京子ちゃんと花ちゃんは心配そうな顔をになった。
何か危ないことになってるのかな?
違う部屋に案内されてそこでレントゲンとやらを撮った。
そしてまたしばらく待たされることになった。

「霞、あんた本当に大丈夫なの?」
「レントゲンって聞くと心配になっちゃうね」
「何もなけりゃいいけど……」

と、そこでまた呼ばれて診察室に向かった。
中では同じ先生が待っていた。
ボードに背景が黒いフィルムが挟んである。
これが、レントゲン?

「まず最初に一つ確認させてください。霞さん、あなたは今までに手術をしたことがありますか?」
「? いいえ」
「そうですか、ではこれは生まれつき、と」
「あの、結論から言ってどうなんですか?」

痺れを切らした花ちゃんが問い詰めると、先生は、なんと言うか、気まずそうな顔になった。

「これが生まれつきだとすれば今まで相当大変だったでしょう。霞さん、あなたは肺が一つしかないんですよ」
「はい?」
「人が生きるのに大切な呼吸器官です。本来なら二つある肺が、あなたの場合は片方しかありませんでした」

そう言って示されたのはあのレントゲン写真。
胸のあたりに白い影が一つだけあった。
けどもう一つ出された、一般的な人のレントゲン写真には影が二つある。
生まれつき体が弱いって言うの、本当だったんだ……。
だから僕は、一度も外に出してもらえなかったんだ。
ううん、違う、出してもらえなかったんじゃなくて外で倒れないように守られてたんだ。
それなのに僕は勝手に親のこと恨んでてバカみたいだ。

「お二人はお友達ですか?」
「はい」
「霞さんのことを、しっかりサポートして行ってあげてください」
「はい」
「わかりました」




**********




帰り道、僕たちは本当に口数が少なかった。
僕が黙っているから2人とも気を使って話さないんだってことはわかるけど、少し辛かった。
かと言って僕自身に何か話題があるわけでもない。

「霞、なんか困ったことがあったら頼ってよね」
「え?」
「なんて言うかさ、ここまで来たらあたし達も他人事じゃ終われないのよね」
「霞さん、ううん、恭華ちゃん。私も花も恭華ちゃんが心配なの」
「そゆこと。ね、どうせ人なんて頼って頼られてなんだから」
「黒川さん、笹川さん……」
「その他人行儀な呼び方もやめにしよっか。あんたの事これから恭華って呼ぶからさ、あたしらの事も名前で呼びなよ」
「えっと、じゃあ花ちゃんと京子ちゃん?」
「オッケ」

そう言うと、花ちゃんは笑顔で僕の頭をガシガシとした。
それに驚いて素っ頓狂な声を出すと、今度は京子ちゃんがクスリと笑った。

「おっし、じゃあこれからあたしのおごりでラ・ナミモリーヌでも行くか」
「えっ花のおごり? 行くっ」
「じゃあ、僕も……」

言うや否や花ちゃんが僕の手をつかんで走り出した。
京子ちゃんが慌てて止めに入ってすぐに歩きに変更したけど、この距離だったら別に良かったんじゃないかな?
ま、いいや。
僕の新しい生活は、まだ始まったばかりなんだから。


[ | mokuji | ]







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