14夢
「失礼します」

ノックをしてから職員室に入る。

少し肌寒い室温と無駄に充満したコーヒーの匂いが僕らを出迎える。

……この匂いは嫌いだ。

コーヒーは特に。

それはさておき、僕らの担任はどこかな?

「そこの君たち」

「?」

「沢田さん、獄寺さん、山本さんであってるかな?」

振り返ったそこにいたのは、焦げ茶色の短い髪に赤縁眼鏡の女教師。

うっわ、ヤバイくらい体育会系じゃん。

絶対的に熱血教師じゃん。

てか何、ヤンクミ!?

「私が担任の新島だ」

リボーンが言ってた新島って、こいつだったのか。

てっきり男だとばかり思ってたよ。

「さて、まずは制服だね。職員室の隣に保管所があるから、選んでおいで」

保管所?

予備の制服とかでも置いてあるのかな?

……とか思った僕がバカだった。

部屋につけられた札には『制服倉庫(転入生用)』と書かれ、中には男女ともに全サイズの制服が揃えられ、千……いや、万を超える量が置かれていた。

ちなみに、管理しているのは『風紀委員』。

……なんか納得した。

「うっわー! 琴音、理沙! 服がいっぱいだよー!!」

「うるさいです隼菜。はしゃぎすぎ」

「激しく同意。ほら、さっさと選ぶよ」

**********

「……気に食わない」

「仕方ないよ琴音。それが現実なんだから」

何が気に食わないのかって、制服だよ。

「なんで2人はLなのに僕だけSなんだっ!」

「「だって160cm越えてるし」」

「隼菜だけぶち殺す」

「なんで私だけ!? 理沙は!?」

「やだなぁ、琴音が私に攻撃できるわけないよ」

「反撃が怖いしね」

「え、それってただのチキn……ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

片手で関節技を決めながらもう片方で制服を整える。

垂れて来た髪を耳に掛け直した時、丁度理沙と目が合った。

「何?」

「ううん。やっぱり琴音には長い髪が似合うなあって」

幼い頃から茶色い髪の毛。

何のこだわりがあってか今に至るまでずっと伸ばし続けて来た。

その結果、その長さは腰の下までになった。

あれだ、スクアーロ級だ。

で、それをポニテにしているのが現状なわけで。

コンコン

『3人とも準備できたか?』

「大丈夫でーす」

理沙の声で部屋のドアが開く。

隼菜を半ば引きずるような形で外に出て、僕らは新島女史の後をついて歩き出した。

「先生、私達って何組なんですか?」

いつの間にか復活していた隼菜が問う。

「全員私のクラス、2-Aだよ」

「それ本当ですか!?」

「ああ。知り合いがいた方がいいだろ?」

2-A。

間違いなくツナ達のクラスだ。

そう言えば全く気にしていなかったけど、この世界の時間軸はどこだろう。

もうすぐ12月に入るわけだし、未来編は終わっているはず。

下手すれば、継承編ですら終わっている可能性が高い。

……流石に代理戦争は終わってないだろ。

『お前ら喜べ、女子3人の転入生だ!』

『ええーっ!!』

おいこら、そのテンションはおかしすぎるでしょ。

盛り上がり方おかしすぎるでしょ。

聞こえてくるのが女子の落胆声だけっておかしすぎるでしょ!?

若干のイラつきとともにドアを開けて教室に入る。

刹那、ざわめきが消えた。

教壇に立って軽く見渡すとすぐにツナを見つけた。

山本や獄寺とも目が合う。

その他にわかるのは京子、花はもちろん、アニメ派涙目のトマゾファミリーの4人。

そして、炎真としとぴっちゃん。

……継承編終わってた!?

悔しいなんて言わないさ。

……言わないもん。

「ふう、沢田琴音です。ツナとは従兄弟に当たります。よろしく」

「獄寺隼菜です。隼人の双子の妹なんですが、似てないとか言わないでくださいねっ?」

「山本理沙です。隼菜とは逆で、武の双子の姉です。以下同文」

「表彰式か」

いけない、思わず突っ込んでしまった。

そんな自分にまたイラつく。

「3人はイタリアからの帰国子女で、向こうで知り合ったらしい。だから家族がここに揃ってるのは偶然だそうだ。ま、仲良くしてやれよ」

ちょっと待て、その設定どこから出て来た?

僕らがその設定を作った覚えはないんだけど。

それともあれか、お馴染みリボーンの仕業か。

ま、なんでもいいや。

指定された席に着く時に、誰かの殺気を感じた気がした。


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