13夢
夜中、寝ることができなかった。

どんなに寝ようとしても目が覚めてしまう。

姫のことで頭がいっぱいだった。

部屋を抜け出して、武やお父さんを起こさないように家を出た。

ふらふらと、気づけば足が沢田家に向かっていた。

近づくに連れて、僅かに何かが聞こえていた。

聞いたことがある気がするけど、何だろう。

《大丈夫、心配しないで。無理して笑おうとしなくても、私に全てをさらけ出していいよ》

……これ、姫の好きな曲だ。

ネットで聞いてハマってから、いつも歌ってる。

屋根の上に人影が見えた。

「琴音、本当にあの曲好きだね」

「わっ、獄寺夫人いつの間に? それに、その呼び方……」

「この世界にいる以上、過去を振り返っても仕方ないじゃん? だったら素直に呼ぼうと思って。……って、だからその呼び方やめてよ!!」

「呼ばないでください。夜ですよ」

「うっ……」

けど、夫人も考えてたんだなぁ……。

過去にとらわれてる私がバカみたいだ。

「そうだね。そうだよね」

「理沙?」

「ううん。なんでもない」

姫は姫だ。

琴音は琴音だ。

うじうじ考えてたって何かが変わるわけじゃない。

何も変えられない。

だってら前を見なきゃ。

後ろを見ずにポジティブイズインフィニティ!

……ん?

なんかおかしいかな?

ま、いっか。

**********

油が弾ける音で目が覚めた。

眠い目をこすって台所に向かうと、見慣れない茶髪の女子が料理を作っていた。

ああ、そう言えば昨日からこいつがいるんだっけか。

双子の妹の隼菜。

あくまでもそう言う設定だから、どこも似てないなんて話は妥協だ。

「あ、おはよう隼人。ご飯もう少しでできるから」

「おう」

琴音が言ってたことは本当らしく、慣れた手つきで料理を終わらせると、皿に盛り付けてテーブルに運んだ。

全部任せるわけにもいかず、そのうち何個かは自分で運ぶことにした。

席について、一口入れる。

うまい。

第一印象はそれだった。

面倒だったから最近はずっとインスタントで済ませていたが、まぁ、これも悪くないかもしれない。

「隼人、顔が赤いよ?」

「なってねぇ!」

**********

「おはようございます10代目!」

「よっツナ」

「おはよう。獄寺君、山本」

「やっほー琴音」

「琴音おはよう」

「んー」

賑やかな朝だ。

いや、騒がしいって言った方があってるかな?

近所迷惑になっていないか心配だよ。

「て言うかリボーン。僕達の制服は? まさか私服で行って雲雀に咬み殺されろと?」

「学校に行けばもらえるぞ」

「そう、ならいい。それじゃあツナ、案内よろしく」

「うん」


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